西島秀俊×内野聖陽『きのう何食べた?』が帰ってきた! 変わらない2人の愛おしい優しさ

『きのう何食べた?』が帰ってきた!

 人気漫画家・よしながふみの同名コミックが原作のドラマ『きのう何食べた?』(テレビ東京)。待望のseason2が始まった。第1話では、生きていれば誰もが経験する環境の変化の中で、西島秀俊演じる筧史朗(通称・シロさん)と内野聖陽演じる矢吹賢二(通称・ケンジ)の変わらない日々を見ることができた。

 月2万5千円の食費が3日を残し限界を迎え、シロさんは絶望のどん底に。一方、ケンジも体重が人生最高値を超えて絶叫する。

 物語冒頭で感慨深かったのは、シロさんを演じる西島のさりげない台詞の言い回しに、シロさんとケンジの関係の深さが改めて感じられたことだ。シロさんがケンジの健康を気遣う姿は几帳面に家計を管理する姿に似ている。とはいえ、「ほら、見してみろよ」とケンジに健康診断の結果を見せるよう促す口調には、大切な人の健康を思うあまりお節介気味になるシロさんらしい優しさが滲む。体型を気にするケンジに、シロさんはふっと笑いながらやや呆れ口調で「何を今更」と口にした。西島がごく自然に発したこのさりげない台詞のおかげで、シロさんとケンジの慎ましくも幸せな日常を垣間見ることができ、観ていて穏やかな気持ちになった。

 また、これも改めて思うのだが、シロさんのモノローグが面白い。第1話では、シロさんの“キャバクラ接待”疑惑や「ニュータカラヤ」の閉店などの思わぬ出来事が起こるのだが、シロさんの心の声と表情のギャップにクスリと笑ってしまう。シロさんは、思わぬ出来事に全く動揺しないわけではない。そのため、困ったり焦ったりしている時には比較的心の声と表情が一致している。けれどシロさんにとっての“竜宮城”であるスーパーマーケットで買い物をしている時は、渋めの表情とは裏腹に心の声がだいぶ饒舌で面白い。値が張る魚を買うか否かで悶絶するモノローグはシロさんにしては感情的で、感情表現豊かなケンジの影響か、なんてことも考えてしまった。

 シロさんが食費を月2万5千円から3万円に引き上げることをケンジに謝罪する場面では、西島の表現力のおかげでよりコミカルに映る。シロさんの振る舞いはまるで不倫したことを謝罪し、必死に許しを請うているように見えるが、謝罪の内容は食費の引き上げだ。ケンジは言動と内容のギャップに思わず吹き出していた。この場面は面白いだけでなく、シロさんにとって食費の変更は一大事であることを伝えてくれるものでもあった。そして何より、シロさんの生活の中心にはケンジがいるということも。食費引き上げの主な理由は物価高によるものだが、買い渋っていた魚を買うと決心をしたのはケンジの健康を気遣ってのこと。シロさんが何か決断を下す時、シロさんの頭にはケンジとの日常が思い浮かんでいるのだと思うとあたたかな気持ちになる。

 そしてケンジもまた、変わらない優しさでシロさんに寄り添う。食費の引き上げに落ち込むシロさんにケンジはこんなことを言った。

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