『きのう何食べた?』S2でさらに深みが増す? シロさんとケンジの関係性の変化を考える
西島秀俊&内野聖陽が主演を務めるドラマ『きのう何食べた? season2』(テレビ東京系)の放送がいよいよ始まる。よしながふみによる人気漫画を原作とする本作は、2019年にseason1が放送され、2020年元日には正月スペシャルドラマが、2021年には映画化もされている。season2はファン待望の続編だ。
本作は、料理上手で几帳面・倹約家の弁護士・筧史朗(通称・シロさん/西島秀俊)と、その恋人で人当たりの良い美容師・矢吹賢二(通称・ケンジ/内野聖陽)のゆっくりとした日常を一貫して描いている。時に、その日常の中に不安や心配事が訪れることもあるが、シロさんとケンジ、そして彼らを取り巻く人々が大切な人と大切な時間を過ごす姿に、観ていて心が穏やかになる。
season2の放送開始に際して、あらためて過去作を鑑賞したところ、2人の関係性の何気ない変化、特にシロさんの愛情表現の変化に心惹かれるものがあった。
シロさんは一見したところ無愛想で、直接的な愛情表現は避ける傾向にある。一方のケンジは対照的に愛情表現は常にストレートだ。ケンジを演じる内野のイキイキとした表情やのびやかな演技を見ていると、茶目っ気たっぷりに愛を伝えるケンジの無邪気さにふっと肩の力が抜ける。そんなケンジを見ていて肩の力が抜けるのはシロさんも同じ。西島はケンジを大切に思うシロさんの感情の機微を、その表情やふとした佇まいの中で表現する。シロさんの愛情表現は慎重すぎてかなり不器用に映るが、物語が進めば進むほど、ケンジに対する深い愛情がひしひしと伝わってくる。
特に劇場版では、よりいっそう表情や言動にシロさんの思いが表れていたように思う。ケンジの様子が普段と違うことや、ケンジが美容室の後輩・田渕(松村北斗)と帰る姿を見かけて動揺し、自分には何も言わず病院へ通っていることを知ったシロさんは不安を覚える。実際には髪が薄くなってきたことを気にしたケンジがとった行動だったのだが、短い金髪へと大胆なイメージチェンジを遂げたケンジに対して、シロさんは深刻な面持ちで「お前、どっか悪いのか?」と心配する。状況が飲み込めないケンジの反応には可笑しみがあるが、心の底から心配するあまり、これまでになくうろたえるシロさんにこちらまで心が苦しくなる。泣きそうな声色で「お前……死んだりしないよな」と不安がったり、ケンジの腕を掴んで「怖かったよ……」「お前が死ぬかもしれないって思ったら、めちゃめちゃ怖かったよ」と涙を浮かべながら気持ちを打ち明けたりして、ケンジに迫るシロさんの思いは愛以外の何ものでもない。
season1から正月スペシャルドラマ、劇場版、そしてseason2に至るまでの間に生じたシロさんとケンジの変化は、西島秀俊と内野聖陽という演者同士の信頼も影響しているのではないかと考える。ドラマ内でも度々楽しそうなアドリブカットが組み込まれていたが、東宝MOVIEチャンネルが公開する劇場版の未公開&NGシーン集でも、自然体に演技を続ける2人の姿を見ることができる。また2021年度前期放送の連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK総合)での共演では、シロさんとケンジとは全く別のキャラクターを演じながらも、視聴者の心に深く残る演技を見せた。西島は清原果耶演じる主人公・百音の上司であり気象キャスターの朝岡を演じ、内野は百音の父・耕治を演じていた。第69話で2人は初めて対面する。耕治の台詞にもあったように「初めて会った気がしない」2人は、心を開かなければ語り合えないような胸中をお互いに打ち明けた。その場面での西島と内野は紛れもなく朝岡と耕治だった。だが、そんな2人の会話劇が視聴者の心を引き込んだのは、それぞれの演技力だけでなく、『きのう何食べた?』で初共演を果たした2人がシロさんとケンジを演じる中で培った関係性にもあるはずだ。演者同士の距離感もまた、演じる役の関係性に影響を及ぼすはずだ。
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