『VIVANT』の功績で日本にも“スパイもの”が増加? 成功の立役者となった“別班”の存在

『VIVANT』が拓いたスパイドラマの地平

 武器や拷問装置を用いるドラマ中の別班は、視聴者のアウトロー願望を反映している。その反面、法を逸脱した非公認組織である別班の矛盾は、官房副長官の上原(橋爪功)が指摘する通りである。国民のために暗闘を繰り広げながら、犠牲と苦労が省みられない影の組織であることの悲哀は、続編が作られるならぜひ掘り下げてほしいところだ。

 特殊任務のスペクタクル性と情報戦にスパイものの醍醐味はある。知りたいという欲望は誰もが持つものだが、一方で知られることで都合の悪い人々もいて、決して全てを知ることはできない、というせめぎ合いの渦中に私たちは生きている。個人レベルで情報の秘匿性が高まっている現代では、誰もがスパイ的な感覚を研ぎ澄まさざるを得ない。そのことは、昨今、エンターテインメントの分野でスパイをキーワードにした作品が人気を得ている現象と符合する。虚実の皮膜が劇中に持ち込まれ、海外で高い評価を得た映画『スパイの妻』や、スパイ任務を通じた疑似家族の日常を描く『SPY×FAMILY』は、親密さへの渇望と情報の断絶状況を反映しており、本質的にホームドラマである『VIVANT』はこの傾向と一致する。

 本作の成功にならって、スパイや情報機関を主役に据えた作品の志向は強まると思われる。作り手の国家観を反映しながらキャラクターの個性が前面に出た『VIVANT』は、クライムサスペンスの地平に新たな道を拓いた。

■配信情報
日曜劇場『VIVANT』
TVer、U-NEXTにて配信中
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、迫田孝也、飯沼愛、山中崇、河内大和、馬場徹、Barslkhagva Batbold、Tsaschikher Khatanzorig、Nandin-Erdene Khongorzul、渡辺邦斗、古屋呂敏、内野謙太、富栄ドラム、林原めぐみ(声の出演)、二宮和也、櫻井海音、Martin Starr、Erkhembayar Ganbold、真凛、水谷果穂、井上順、林遣都、高梨臨、林泰文、吉原光夫、内村遥、井上肇、市川猿弥、市川笑三郎、平山祐介、珠城りょう、西山潤、檀れい、濱田岳、坂東彌十郎、橋本さとし、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李、役所広司
プロデューサー:飯田和孝、大形美佑葵、橋爪佳織
原作・演出:福澤克雄
演出:宮崎陽平、加藤亜季子
脚本:八津弘幸、李正美、宮本勇人、山本奈奈
音楽:千住明
製作著作:TBS
©︎TBS

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