林遣都、富栄ドラム、迫田孝也ら、『VIVANT』を傑作たらしめた“脇役”ではない脇役たち

『VIVANT』を傑作にした“脇役”たち

 TBS日曜劇場『VIVANT』が最終回を迎えた。主演級を揃えた豪華キャストによる熱演、サプライズが続く怒涛の展開、日本のドラマとしては空前の物量によって、近年にない視聴者の盛り上がりを生み出すことに成功した。

 成功要因の一つとして、ドラマを支えた脇役たちの存在を挙げておきたい。堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、松坂桃李、役所広司、サプライズ出演の二宮和也に目を奪われがちだが、当然ながら彼らだけではこの大作は成り立たない。「これは誰だ」と注目を集めたニューカマー、「何かあるのではないか」と思わせた曲者、「やっぱりすごい」と存在感を見せつけた名優たちが揃って『VIVANT』を盛り上げ続けた。

 まずは、ニューカマー。一躍脚光を浴びたといえば、真っ先に思いつくのが野崎(阿部寛)の相棒のエージェント・ドラム役の富栄ドラムだろう。愛嬌のある顔立ちで、有能かつ万能なエージェントを演じて人気者になった富栄は元大相撲力士。話題のNetflixドラマ『サンクチュアリ -聖域-』にも出演している。今年一番、顔と名前を売った人だろう。バルカ警察の腕利き警察官・チンギスを演じたバルサラハガバ・バタボルドもドラマの盛り上がりに大いに貢献した。モンゴルで様々なアートに関する人物を表彰する「シルバーツリー」で2021年の年間最高の俳優に選ばれた名優だ。

 主人公・乃木憂助(堺雅人)の同僚であり、正体は天才的なホワイトハッカー・ブルーウォーカーで、親子ほど歳の離れた上司・長野(小日向文世)と不倫していて、テントのモニター・山本(迫田孝也)に凌辱されるという非常に情報量の多い太田梨歩役を演じた飯沼愛にも注目が集まった。『TBSスター育成プロジェクト 私が女優になる日_』で9000人の中からグランプリに選ばれた逸材だ。憂助の少年時代に扮した櫻井海音は、秋から始まる人気コミック原作のドラマ『アオハライド』(WOWOW)で主演を務める注目株だ。

 曲者たちも数多く登場した。実力と知名度を兼ね備えているからこそ、「裏に何かあるのではないか」「これだけじゃ終わらないはず」と視聴者に思わせて、“考察”を促進した面々と言えるだろう。

 最初は何食わぬ顔で憂助の協力者を装いながら、本作随一の極悪人だった山本役は迫田孝也が演じた。近年は『集団左遷‼』、『天国と地獄〜サイコな2人〜』、『ドラゴン桜』、『マイファミリー』などTBS日曜劇場の常連と化している。公安外事第4課の捜査官・新庄役の竜星涼ほど曲者感の強い俳優もいないだろう。超有能なのに尾行だけが下手すぎるという謎設定に、最後まで何らかの疑惑を抱く声が最後まで相次いだが、最終回はそれを証明する形となった。

 公安に協力するホワイトハッカーの東条を演じた濱田岳も「まだ何かあるのでは」と思わせるに十分のキャリアの持ち主だ。「まだ何かあるのでは」という視聴者の疑念がもっとも沸騰したのは、丸菱商事専務・長野役の小日向文世だろう。数々の映画やドラマで重鎮、黒幕、真犯人などを何度も演じてきていたのだから、「部下と不倫していただけの上司のわけがない」と視聴者に思われても仕方がなかったが、本当に部下と不倫していただけの上司だった。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の北条時政役が記憶に新しい坂東彌十郎、キャストリストに出ていたのになかなか登場しなかった馬場徹(彼もの日曜劇場常連組である)も曲者感が強かった。

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