加藤清史郎、“名子役”から“演技者”へ 『最高の教師』相楽役で視聴者を圧倒
相楽というキャラクターは、おそらく誰が演じてもヤバい奴に変わりないだろう。先述したように彼は変わったが、暴走していた頃には歩み寄ることのできる要素が一切なかった。しかし、歩み寄るスキがまったくないからこそ、ただの悪役にとどまりかねない。悪役というのはあくまでも作品内におけるポジションに過ぎず、いくら法を犯すような人物だったとしても、それはキャラクターでしかない。どれほどヤバい奴なのかは、いかに役のポジションを理解し、どうキャラクターを表出させられるかにかかっている。つまりすべては俳優の力量しだいということだ。
繰り返すように、相楽には大きな変化が起きた。“問題児=悪役”からの変化だ。とはいえ、何も急に優等生になったわけではない。他者の痛みを知り、自身の弱さを認め、ちゃんと気持ちを言葉にするようになったのだ。教師役の松岡に詰め寄られる際の加藤の演技は筆舌に尽くしがたいものがあった。それまで相楽が張っていた虚勢は他者を寄せつけないものだったが、まるで身につけている鎧が砕けていくように、それは崩れていったのだ。やがて無防備になった彼は自身の過ちを認め、涙を流して謝罪した。演じる加藤が口にする「ごめんなさい」は、それを向ける相手によって違いがあった。ここでどれくらい感情的になるのかによって、その聞こえ方は変わってくる。取り返しのつかないことなのか、それともまだ取り返しのつくことなのか。変わりゆくひとりの人間の像を胆大心小な演技で立ち上げてみせた彼は、やはりヤバい。
かつては「こども店長」としてトヨタ自動車のCMに出演し、その存在が国民的なものとなった加藤清史郎。実写版『忍たま乱太郎』(2011年)で主演を務めていたこともいまだ鮮明な記憶として残っている。しかし、“誰もが知る国民的な俳優=いい俳優”というわけではもちろんないし、知名度と実力は比例するものではない。むしろ、俳優に対するパブリック・イメージが強固なものになればなるほど、彼・彼女らはそれを覆すのに苦労するはず。“名子役”だった加藤なんて特にそうだ。
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主演映画『#ハンド全力』(2020年)やドラマ『ドラゴン桜』第2シリーズ(2021年/TBS系)、ミュージカル『るろうに剣心 京都編』(2022年)では瀬田宗次郎を好演していたが、いずれも彼のキャリアにおいて特別な驚きのあるものではなかった。しかし、『最高の教師』の加藤はヤバい。ヤバすぎる。もちろん演じる役の話ではない。ここまで記してきたとおり、“演技者”としての彼の話である。あの愛らしい「こども店長」の面影は、もうどこにもない。
■放送情報
土曜ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:松岡茉優、芦田愛菜、奥平大兼、加藤清史郎、當真あみ、茅島みずき、山時聡真、本田仁美(AKB48)、窪塚愛流、福崎那由他、田牧そら、山下幸輝、寺本莉緒、萩原護、詩羽、田中美久(HKT48)、浅野竣哉、丈太郎、柿原りんか、橘優輝、莉子、田鍋梨々花、夏生大湖、藤嶋花音、岩瀬洋志、阪本颯希、岡井みおん、藤﨑ゆみあ、のせりん、川本光貴、白倉碧空、細田善彦、長井短、サーヤ(ラランド)、吉田羊、犬飼貴丈、荒川良々、松下洸平
演出:鈴木勇馬
プロデューサー:福井雄太、鈴木努、秋元孝之
チーフプロデューサー:田中宏史
主題歌:菅田将暉「ユアーズ」
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
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