『最高の教師』鵜久森の身に起きた事件の真相 九条が強い口調で放つ最も訴えかけたいテーマ
迫田(橘優輝)と瓜生(山時聡真)、向坂(浅野竣哉)の3人が浜岡(青木柚)のもとに乗り込み、なぜあの日、鵜久森(芦田愛菜)が転落死した日に学校にいたのかを問い詰める。すると浜岡は、相楽(加藤清史郎)ではない“もう1人”の人物から頼まれたと語る。それは3年D組のクラス内カーストの上位に君臨する西野(茅島みずき)であり、その取り巻きの野辺(田牧そら)と金澤(田鍋梨々花)も関係している。9月16日に放送された『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系)第9話は、彼女たち3人にフォーカスしながら、いよいよ鵜久森の一件の真相へと迫っていく。
瓜生から西野たちのことを聞かされた九条(松岡茉優)は、それでもなぜ鵜久森が1人であの場所に向かったのか引っ掛かりを感じていた。翌日D組の教室に来ると、3人の姿がない。虫の知らせのように、“最悪”が起きる前に3人を探さなければと感じた九条は教室を飛び出し、それを見ていた生徒たちも我修院(荒川良々)ら教員たちと共に3人を探すために町へと繰り出していく。そんななか、ボウリング場にいた夏穂(サーヤ)と智美(森田望智)は、憔悴しきった様子でいる西野たち3人の姿を目撃。九条に連絡を入れるのである。
罪の意識に駆られ、自らの死をもって償おうとする西野たち3人の姿は、もはや償いではなく向き合うことからの逃避に他ならない。そんな彼女たちの元へ駆けつけるのが、月野(柿原りんか)たちクラスのなかでもほとんど目立たない4人の女子。そこで月野が発する「あなたたちのことを一生なんて気にできない」という言葉は、いつぞや工学研究会の2人が相楽に頭を下げながら伝えた決別を願い出る言葉にもよく似ている。自分を中心に生きている者たちにとって、最も鋭利に突き刺さる類の言葉というわけだ。
さて、そこにさらに東風谷(當真あみ)たちが到着し、3人は教室へと戻ってくるわけだが、そこからが今回のエピソードの本題となる。西野があの10月4日に鵜久森との間に何があったのかを、順を追ってクラス全員に説明していく。「そんなつもりじゃなかった」という言葉を使う彼女に対し、初めは生徒たちに話し合わせるはずだった九条は黙っていられなくなる。ここで九条が強い口調で説く“想像の欠如”を批判する言葉こそ、このドラマにおける最も重要なキーワードであり、このドラマが現実の世界に最も訴えかけたいテーマなのだとよくわかる。
そしてその後、教室にやってくる鵜久森の母・美雪(吉田羊)が西野たちに語る言葉も然り。被害者の遺族、すなわち遺された者が加害者に向ける「赦すことはできない」の言葉と、「忘れないでいてほしい」という言葉。赦す/赦されるということが形骸化してしまっている現代において、赦された者はおそらくその意味と向き合うこともなく、己の罪を忘れてしまう。だからこそ、赦さず、忘れずに背負い続けたまま生きてもらうことを望む。どこにも救いはない幕引きになるが、それがいまの時代に非業の死、とりわけ若者同士によってもたらされるそれを描く上で、避けては通れない方法だということか。