『いつかの君に』チョン・ヨビンが“陽キャ”と“陰キャ”を演じ分ける うっとりする映像美も

 『いつかの君に』アン・ヒョソプが1人2役

 一方、それまでミンジュに恋をしていたインギュは、聴覚障碍者として補聴器を使っていることをからかわれる“陰キャ”で、自分に似たミンジュに惹かれていたが、彼女の変わりように戸惑っていた。

 物語は、1998年、2023年に加えて、2002年、2007年と、タイムスリップを繰り返して陽キャのジュニと、ジュニにそっくりな陰キャの高校生ミンジュの魂が入れ替わっていく。高校生のシホンと、ミンジュ、インギュの恋の三角関係と、学園内に起こる不可解な出来事。1998年のジュニが、2023年に来た理由が明かされていく中で、恋人ヨンジュンも合わさり、タイムスリップが重なっていく。物語は、時系列を前後しながら、自己肯定感の高い人間の思考と行動と、内気な人が抱える苦しみなど、それぞれの内面世界も絡み合い、展開していく。

 アン・ヒョソプも、チョン・ヨビンも1人2役を演じているのだが、“陽キャ”と“陰キャ”の違いも演じており、それぞれ1人3役とも言える圧巻の演じ分けをしている。ジュニやシホンに扮する際には、まぶしい生命力を持ち、歩き方も堂々としている。ミンジュやタイプスリップで現れるシホンは、陰を背負い、憂いと翳りのオーラを放っている。アン・ヒョソプとチョン・ヨビンのビジュアルの違いにも目を奪われるのだが、中でも、ジュニとミンジュの内と外、陽と陰の対決は圧巻で、同一人物が演じているとは思えない凄みがある。筆者は全編を通して、チョン・ヨビンではない役者が他にいるのではないかと、彼女のポテンシャルの大きさと深さに驚きを隠せなかった。

 本作は全編を通して、エモーショナルな雰囲気と、生きることへの強烈なメッセージ、VFXとCGを多用したすこぶる美しい映像美の世界に酔いしれることができる。

 原作である台湾の『時をかける愛』は、愛が織りなすミステリーが21年の時を越えて交差し、次第に謎が解き明かされていく作品で、非常に人気の高い名作として数々の賞を受賞している。リメイクにあたり原作から改変されている部分もあり、台湾版との両方を観比べる楽しみ方も可能だ。

■配信情報
『いつかの君に』
Netflixにて配信中
出演:アン・ヒョソプ、チョン・ヨビン
監督:キム・ジンウォン
脚本:チェ・ヒョビ

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「海外ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる