シン・ミナとイ・スンギのみずみずしい演技 『僕の彼女は九尾狐<クミホ>』に癒される

『僕の彼女は九尾狐』に癒される

 Netflixで韓国ドラマ『僕の彼女は九尾狐<クミホ>』の配信がスタートした。2010年に韓国で放送された本作は、ドラマ『還魂』の脚本を手掛けたホン姉妹として知られるホン・ジョンウン、ホン・ミラン、演出をドラマ『スターの恋人』のプ・ソンチョルが担当している。

 アクションスターを目指し大学の演劇科に通うチャ・テウン(イ・スンギ)は、金持ちの祖父(ピョン・ヒボン)に甘やかされて育ったお坊ちゃんだ。ある日、だらしないテウンに激怒した祖父から逃げるために迷い込んだ寺で、テウンは500年間掛け軸に封印されていた九尾狐の封印を解いてしまう。

 テウンのおかげで人間界に戻ることができた九尾狐は、ク・ミホ(シン・ミナ)と名乗り、テウンにくっついて離れない。そんな2人が次々と騒動を起こしていくドタバタファンタジーコメディーだ。

 現在もトップスターとしてさまざまなドラマで活躍するイ・スンギとシン・ミナが13年前の作品で見せたみずみずしい演技に注目が集まっている。そんな本作の魅力について、改めて紹介したい。(以下、ネタバレあり)

シン・ミナ演じる九尾狐がとにかくかわいい!

 九尾狐を題材にしたドラマや映画はいろいろあるが、『僕の彼女は九尾狐<クミホ>』で初めて九尾狐の存在を知った人も多いのではないだろうか。九尾狐とは、9本の尾を持つ中国に伝わる伝説上の生物。キツネの妖怪といわれており、昔から韓国では、美少女となって男性をたぶらかし殺してしまう恐ろしい存在として伝わってきた。

 そんな九尾狐をシン・ミナが演じているのだが、恐ろしいどころか、とにかくかわいい。この作品の最大の魅力は、ミナが演じるク・ミホの純粋さ、真っ直ぐさと言っていいだろう。

 ミホは500年前、人間の男性に嫁ぐために準備をしていたのだが、ミホの美しい姿に嫉妬した女性たちが「男の肝を食って殺してしまう」と噂を流したため、誰にも嫁げなかった。悲しみに暮れたミホは、三神様によって二度と人間界に戻れないよう9本あった尾を切り取られ、掛け軸に封じ込められてしまった。

 そして現代になり、掛け軸がある寺に逃げ込んできた大学生のチャ・テウン(イ・スンギ)を脅すことで、掛け軸に9本の尾を書かせ、500年ぶりに人間界に舞い戻ってきたところから物語が始まる。最初、テウンに対して「お前を食ってしまうぞ!」と脅して言うことをきかせていたが、テウンのことが気に入ったミホは、純粋でかわいらしい女性に変貌していく。

 九尾狐といえば、2021年に放送されたドラマ『九尾の狐とキケンな同居』を思い浮かべる人もいるだろう。このドラマではチャン・ギヨンが999歳の九尾の狐を演じ話題になった。ギヨンが演じた九尾の狐は「オルシン(長老)!」と呼ばれ、999年を生きてきた落ち着きのある男性の話し方としぐさが特徴的だった。

 しかし今回ミナが演じているミホは、落ち着きとは真逆のキャラクターだ。姿形は美しい大人の女性だが、子どものような無邪気なしぐさと話し方で、時々突拍子もないことをする。肉が大好きで「コギ~、コギ~」とテウンにねだり、口の周りを油まみれにしながら鶏肉をパクパク食べたり、「うれしくてしっぽが出そう!」と笑顔で言ったり、純粋でかわいくて、思わず笑ってしまう。

 500年間少女のまま封じ込められていたので、人生(狐生?)経験は積まれずにいたのだろう。幼いままの状態で人間界に戻ってきたことを、ミナは無邪気な演技で表現しているのかもしれない。

 一方で、九尾狐であるがゆえに特殊能力が多々ある。怪力の持ち主でトラックを平気で動かしたり、空高く跳んだり、ものすごい速さで走ったりしてテウンを驚かせる。しかしそれは、テウンを守りたいと思う正義感から発揮されることが多く、ミホはとても純粋で素直な九尾狐なのだ。

 そんなミホは人間になりたいと願い、狐玉をテウンの身体の中に入れ、100日間を共に過ごすことになる。最初は子どもっぽいしぐさを見せていたミホが、テウンと一緒に過ごすうちにだんだん大人の女性に変貌していく。物語の後半、ミホはテウンのために苦しい選択を迫られるが、彼女の切ない姿に涙することは間違いない。

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