『シッコウ!!』は伊藤沙莉演じるひかりの“成長物語” 織田裕二のレアな長ラン姿も

『シッコウ!!』はひかりの“成長物語”

 執行官はタフでなければ続けられない仕事だ。そもそも裁判所の職員としておよそ10年働いた人がなる険しい道のりの職業であるが、小原が罵詈雑言を浴び、時には反社会的勢力と対峙し、あらゆるひどい目に遭っているのを、ひかりは執行補助者としてそばで見てきた。そんなひかりが感じたのが「人間って案外悪くない」ということだった。どんなにつらい状況になっても、もう一度生きていこうとする人がたくさんいた。図太く、気高い、生きていく力を人は持っている――そんな人生に触れる度に、ひかりは勇気をもらっていた。「執行官になって、人間をもっと知りたい」というひかりの思いは、執行官室の事務員を経て、ラストに執行官となった姿で叶うこととなる。

 執行官の役割は、債務者に人生を一歩踏み出してもらう、区切りをつけてリスタートしてもらうことにある。今年4月に初の女性執行官が誕生したばかりという現実を踏まえても、今作のラストはメッセージ性の強いシーンであるが、もともと“犬担当”として現場に呼ばれていたはずのひかりが、いつからか女性として、さらにはひかり独自の執行補助者としてのポジションを担い始めていた。勝ち気でいて、でも打たれ弱い、絶妙な塩梅のひかりのキャラを伊藤沙莉が好演していた。

 小原はひかりだけでなく、作品自体にもしつこく愛されていた。言い換えれば、織田裕二へのいじりは『シッコウ!!』でしか見られないレアな姿だったと言える。最終回は長ランに、リーゼントの“小原くん”。これが本作のクランクアップだったというエピソード(※1)もまた面白い。『シッコウ!!』はここで一旦の“ケースクローズド”となるが、脚本を手がける大森美香がインタビューの中で「私としてはシリーズ化されたらいいなと思っています」(※2)と発言している。執行の数だけ“ケース”はあり、その度にひかりは人の人生に触れていく。

 凛々しい顔つきで玄関のドアを開ける執行官のひかり。その続きが描かれることを願って。

参照

※1. https://realsound.jp/movie/2023/09/post-1430037.html
※2. https://realsound.jp/movie/2023/09/post-1422437.html

■配信情報
『シッコウ!!~犬と私と執行官~』
TVer、TELASAにて配信中
出演:伊藤沙莉、中島健人(Sexy Zone)、織田裕二、笠松将、ファーストサマーウイカ、六角精児、菅原大吉、駒井蓮、モロ師岡、宮崎美子、渡辺いっけい、勝村政信
脚本:大森美香
音楽:得田真裕
ゼネラルプロデューサー) 横地郁英(テレビ朝日)
プロデューサー) 川島誠史(テレビ朝日)、菊池誠(アズバーズ)
演出:田村直己(テレビ朝日)、星野和成、高橋貴司
原案:小川潤平『執行官物語』
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
©︎テレビ朝日

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