『シッコウ!!』脚本家・大森美香インタビュー “執行官”をドラマにしようとした背景とは?

『シッコウ!!』脚本家・大森美香が語る

 今、飛ぶ鳥を落とす勢いの俳優・伊藤沙莉が、GP帯連続ドラマ初主演を務める『シッコウ!!~犬と私と執行官~』(テレビ朝日系)。

 『カバチタレ!』(フジテレビ系)や『あさが来た』(NHK総合)、『未解決の女 警視庁文書捜査官』(テレビ朝日系)など、数々のお仕事ドラマを手掛けてきた脚本家・大森美香が新たに目をつけたのは、“執行官”と“執行補助者”という多くの視聴者にとって聞きなじみのない職業だった。

 “執行補助者”を主人公にしようと思い立った経緯や、主演の伊藤、共演の中島健人、織田裕二が実際にキャラクターを演じている姿を見た感想を、大森に聞いた。(編集部)

「(伊藤沙莉演じる)ひかりは“視聴者側の目線”の人」

――初めに、本作の企画があがった経緯を教えてください。

大森美香(以下、大森):大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)の脚本を書いていた2~3年の間、気持ちはずっと幕末から昭和の初めを生きていました。しかも当時はコロナ禍で外にも出られない状況だったので、なおさらその世界に入りこんでいました。それが終わって、テレビ朝日さんとドラマの仕事をすることになったときに「今の日本ってどんな時代なんだろう」とふと思ったんです。そこで、今の日本をいろいろと切り取れるような題材にしたいとお伝えしました。

――今回の作品で描かれる「執行官」を知ったきっかけは?

大森:もともとお仕事ドラマにしたいと考えていましたが、資料の中に執行官の方が書いた文章のコピーがありました。それがすごく面白かったし、執行官という仕事についても知ることができました。執行官とは裁判所の職員です。裁判で出された結論が実現されない場合に強制的に執行するのですが、差し迫った人たちのところにばかり行かなくてはなりません。だから執行官という職業を通して、今の日本のいろいろな側面が見えてくるのではと思いました。

――今年の4月に初の女性執行官が誕生したばかりということもあり、タイムリーでしたよね。

大森:今まで女性執行官が一人もいないところから、やっと一人生まれたという状態なんですよね。もちろん私がこの脚本を書いていた時点では、女性執行官はまだ一人もいなかった。そういう職業に吉野ひかり(伊藤沙莉)のような女の子が飛び込んでいったら面白いなと思っていました。

――この作品を観て、これから執行官を目指す人が増えるかもしれませんね。

大森:執行官は裁判所の職員として10年くらい働いている方がなるような仕事なので簡単ではありませんが、執行官の世界を知らなかった人にも、こういう職業があると知ってもらえたら嬉しいです。

――毎回登場する犬とキャスト陣の組み合わせもユニークだと思いました。

大森:実は原案となった書籍『執行官物語』(小川潤平著/文芸社)の中に、「犬がいると執行が大変だ」というようなことが書かれていました。それを読んだときに、犬が苦手な執行官と犬が得意な女の子の掛け合わせは面白くなるのではと思い、この設定にしたんです。

――これだけ犬が登場する脚本だと、映像化する際に難しいこともありそうですね。

大森:撮影現場は本当に皆さん大変だったと思います。キャスティングも「犬が大丈夫か」というところから確認して行われたんじゃないかと思っています。

――伊藤沙莉さんや織田裕二さんが実際に演じている姿をご覧になって、どんな印象でしたか?

大森:本作は執行官のドラマです。ただし、主人公のひかり自体は執行官ではないし、あくまでも“視聴者側の目線”の人であってほしかった。その中で、伊藤さんは執行官役の織田さんの個性に負けない強さやたくましさを持った素敵なヒロインになっていると思います。

――栗橋祐介役の中島健人さんの印象も教えてください。

大森:栗橋役は、一番演じ方の幅が広く、頭の中で動きを計算しにくい役どころだと思います。だからこそ、どんなキャラクターにも見せられるので、そこを中島さんがどう演じられるのか楽しみにしていました。そしたら「栗橋くんって、こういう人だったんだ」と思うような不思議なお芝居もたくさん飛び出してきて。脚本で想定していたよりもキラキラしていましたね。

――栗橋の新たな一面が見られたということですね。

大森:眼鏡をかけていてもアームカバーをしていても、全く“埋もれない人”になっていました。おそらく監督と中島さんがいろいろとセッションして作られたキャラクターだと思います。

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