『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』を観ろと叫びたい! ドロドロとした感情が痛烈に胸を穿つ
それから本作における生々しくてどうしようもないキャラクターを語る上で、長崎そよ(小日向美香)の存在を避けることはできない。愛音がバンドをはじめていくうえで、初めてメンバーになってくれたのが長崎そよだ。彼女について公式サイトに書かれている文章を一部引用すると、「いつも穏やかな雰囲気のお姉さん的存在。誰にでも優しく、周りから頼られることが多い」だ。ここに書かれていることに間違いはない。だがこの作品は『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』であることを忘れてはいけない。
冒頭で「この文章を衝動に赴くままに書いている」と記したが、彼女についてはどこまで書くか悩んだ。ひとまずこの記事で長崎そよについての言及は「愛音からのメッセージを無の表情で未読無視する」だけに留めておこうと思う。あと「メッセージ ブロック 確認方法」で検索したのも長崎そよさんだ。あとは自分の目で確かめてほしい。
長崎そよはとにかく壮絶な活躍をするキャラクターなのだが、ひとつだけ安心して欲しいのは『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』を最新話まで観た人で、長崎そよが嫌いな人は間違いなくいないということだ。むしろ大好きな人ばかりだと思う。本作におけるキャラクターの特徴に生々しいという言葉を多用したが、生々しいということは同時に普遍的ということでもある。この記事でキャラクターに投げかけた言葉の数々はちゃんとブーメランとなってこちらに返ってきている。卑怯とまで断じた燈の受け身のコミュニケーションも、さもセンセーショナルな出来事のように書いた長崎そよの未読無視も、どうしようもないけど全部共感できてしまう。
『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』に出てくるバンド「MyGO!!!!!」はそんな普遍的でどうしようもないやつらが集まって出来たバンドだ。その成り立ちさえ非常に空虚でろくでもなく、そんなバンドなわけなのだから全員がバラバラな方向を向いている。ギスギスもしているし、ドロドロもしている。そんな彼女たちがひとつになる瞬間を見てほしい。バンドと音楽のアニメとして、これほど美しい瞬間はないと思った。感情を搔き立てるカメラワークに胸を衝く感情の濁流のような音楽。あんなにバラバラだった彼女らが感情を剝き出しにしてひとつになったあの4分21秒は、一生心に焼き付いて離れないと思う。
本作はキャラクターのどうしようもない部分を「そのままでいい」と肯定しているわけではない。だが同時に否定もしない。ただそれらを「迷子」と包括し、迷子のまま進むことを肯定している。だからこそ『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』は唯一無二の輝きを放つアニメであり、普遍的に心を穿つ物語であり、より多くの人に観てほしいと思わせるのだ。
とまあいろいろ書いたが、正直『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』の魅力を10分の1も説明できている気がしない。これだけ文字数を費やしながら「MyGO!!!!!」のメンバーである立希(林鼓子)や楽奈(青木陽菜)のことを書けてないし、これからのやばい活躍に期待ができる祥子(高尾奏音)や睦(渡瀬結月)やにゃむ(米澤茜)のことだって書けていない。あとCGアニメーションでの感情表現の自然さとか、間の作り方とか、とにかくいろいろすごいこととかを書けていない。まあこれらはやはり、自分の目で確認してもらうしかない。つまり言いたいのは「観てくれ」ということだけだ。
■放送情報
『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』
TOKYO MX・ABEMAほかにて、毎週木曜日放送中
公式サイト:https://anime.bang-dream.com/mygo/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/bang_dream_info