『VIVANT』二宮和也演じるノコルは一体何者なのか 福澤克雄作品の役に共通する“父親”の影
7月に放送された第1話のラストシーン。広大な草原のなかで民族衣装に身を包み馬にまたがり、役所広司と現地の言葉で会話をする。そのシーンをもって“サプライズキャスト”として豪華布陣のTBS日曜劇場『VIVANT』への出演が明らかにされたのが二宮和也だ。
しかしその後、堺雅人演じる主人公・乃木や阿部寛演じる公安の野崎、二階堂ふみ演じる薫がバルカから脱出しようと試みる様や、物語の発端となった誤送金事件をめぐる攻防が日本で繰り広げられていったこともあり、結局二宮が演じていた青年は何者なのかわからぬまま、ドラマは中盤まで突入していった(事前にメインキャストとして告知されていたにもかかわらず、第4話まで登場しなかった松坂桃李の例もあるので、それがこのドラマのスタイルであり、ある種のクリフハンガーのようなものなのかもしれない)。
すでに死んだと思われていた乃木の父親が、“別班”や公安が追っている国際的なテロ組織「テント」を率いるノゴーン・ベキであるという大きな事実が判明した第5話の終盤。役所の演じていた役柄がノゴーン・ベキ、すなわち乃木の父親であるという情報が提示された直後、テントの幹部たちの会議の模様が描写される。そこでベキに最も近い席に座った二宮演じる青年ノコルは、ベキに「お父さん」と語りかける。その瞬間、一気に乃木とノコルの関係がドラマ終盤の大きなカギを握るものだと予感させられたのである。
さて、乃木役の堺といえば言わずもがな『半沢直樹』シリーズがあり、阿部は『下町ロケット』に2021年版の『ドラゴン桜』、さらには映画『祈りの幕が下りる時』。そして役所は『陸王』と、近年の「TBS日曜劇場」の人気作の主演キャストであり、かつ福澤克雄作品の顔ともいえる俳優が勢ぞろいしたことが、この『VIVANT』の放送前からの最大の注目ポイントであった。
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もちろん二宮自身も2022年の4月クールに「TBS日曜劇場」で放送された『マイファミリー』で、連続誘拐事件に巻き込まれる主人公を演じていたわけだが、福澤作品に限ればその前に主演を務めた『ブラックペアン』(厳密に言えば福澤が演出を務めたのは第1話のみであるが)があり、さらに遡れば二宮の連ドラ初レギュラー作品となった1998年放送のTBSドラマ『あきまへんで!』も、福澤が演出を務めた作品である。
『ブラックペアン』で二宮が演じていたのは、天才的なスキルを持つ外科医で、冷酷な一面から“オペ室の悪魔”とも呼ばれる渡海征司郎。患者を救うことを最大のモットーとして、医療過誤と大病院の隠蔽体質を憎むつかみどころのない男であった。同僚に「邪魔」と冷たく言い放つなど、なんとも取っ付きづらそうな印象を受ける渡海は、回を追うごとにそのバックグラウンドーー過去に医師だった父が医療過誤で病院を追われていたことーーが明かされていき、徐々に人間らしさが垣間見え、同時に彼の医師としての矜持のようなものが明瞭に見えていく。
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一方『あきまへんで!』は、もう25年も前の作品で観返すすべがほとんどないため、おぼろげな記憶を頼りに書かせてもらうのだが(なので是非ともこの機会に配信なりソフト化なりをお願いしたいところだ)、裕福な青木家の長男(上に姉が2人いるが)で、思春期真っ只中の高校生の役だった。父の会社の跡取りを期待されており、女きょうだいしかいないことから居場所がなく(港の見える丘公園のベンチで本を読んでいるシーンはよく覚えている)、年上の女性への恋心を抱くことなどを通して徐々に人間的に成長していく姿が描写されていたはずだ。