『らんまん』浜辺美波だからこそ成立した寿恵子の“噺” 待合茶屋「やまもも」が開業

『らんまん』“人”を愛する寿恵子の力

 現代ではGoogleマップをはじめとする地図情報サービスを使えば、日本だけでなく、世界中の町並みを見たり、その地域情報を知ることができる。しかし、実際にその町に趣き、歩いて、見て、聞いて、触って、嗅いで、味わって、自らの五感でしか体感できない情報もたくさんある。その方が圧倒的に多いだろう。

 『らんまん』(NHK総合)第115話にて、帳面を手にした寿恵子(浜辺美波)が向かったのは渋谷。叔母のみえ(宮澤エマ)から人と人とを繋ぐ待合茶屋を開店させる話を持ちかけられている町だ。1897年、明治30年の渋谷は農村地帯が広がる田舎で、一見すれば未開拓の荒野。だが、寿恵子には東京で一番賑やかな町になるという確信があった。

 町に息づいていたのは、人と人との繋がり。そして他所の町にはない一品が揃う、店ごとの特色である。ふらっと入った茶店で出てきたのは、その当時では珍しいポルトガルのお菓子「ボーロ」で、お茶も松濤園で採れた茶葉。居酒屋「荒谷」の握り飯も、ほかの店には出せない味、言ってみれば矜持があった。あるのは弘法湯のみ、と町の人々は口を揃えて言うが、不思議と渋谷にはえもいわれぬ活気が漲っていた。

 万太郎(神木隆之介)が植物であれば、寿恵子は人々を観察することに長けている。さらに話し手としてのスキルも。会話の中から聞き出す話術も腕があるが、真価を発揮するのは聞く者の興味を引く“噺”。弘法湯の店主・佐藤(井上順)ら、渋谷で出会った町の人々を、口説き落としていくさまは、これまた見事だ。

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