もう二度と作れない? テレビドラマ史に刻まれた『西部警察 PART-II』の超絶アクション
CSホームドラマチャンネルでは“石原裕次郎生誕90周年記念特別企画”と銘打って、石原プロモーション制作のテレビドラマを集中的に放送しているが、12月14日からいよいよ『西部警察 PART-II』が始まる。前作『西部警察』のセールスポイントだったアクションと車両爆破をさらにスケールアップさせた続編で、放送当時はテレビに釘付けになった視聴者も多いことだろう。
ここで『西部警察』誕生の経緯を少しおさらいしておこう。前身となったのは日本テレビで放送されていた連続ドラマ『大都会』シリーズだ。暴力団事件を追う刑事と犯罪者、双方を掘り下げた硬派な人間ドラマ『大都会 闘いの日々』(1976年)で石原プロは本格的なテレビドラマの制作に乗り出した。倉本聰をメインライターとしたシリアスで実直な脚本は評価されたものの、視聴率が伸び悩んだため、石原裕次郎は「今度は視聴率を取りに行こうよ」と提案。娯楽色を強くした『大都会 PART II』(1977年)で視聴率が向上したことから、石原プロ専務(当時)の小林正彦はこの方向性をさらに推し進め、アクション面を強化したシリーズ第3作『大都会 PART III』(1978年)へと繋がった。
この後、さらにスケールの大きなドラマを作りたいと考えていた石原プロは、テレビ朝日から破格の好条件を提示されて、番組の大まかな設定をそのまま持ち越した『西部警察』(1979年)を制作することとなる。『大都会』シリーズを立ち上げた日本テレビのプロデューサー岡田晋吉は2003年発売の自著『青春ドラマ夢日記』の中で、石原プロを引き留められない事情が日本テレビ側にあったとはいえ、「『西部警察』をテレビ朝日に譲ってしまったのは、勿体なかったなと思う」と回顧している。テレビドラマ史に残るほどのシリーズに育った『西部警察』の歴史を見れば、最初にその礎を築いたスタッフがそう感じるのも、無理からぬことであろう。
『西部警察』は放送開始早々、銀座や永田町を戦車のような大型装甲車が走り、巨大な車輪がパトカーを踏みつぶす鮮烈な映像で視聴者の度肝を抜いて、その後も大スケールの番組作りで成功を収めた。満を持してスタートした『西部警察 PART-II』(1982年)は、派手なカーアクションと爆破、銃撃戦をガンガン盛り込んだ、多くの人々の記憶に今なお残る“『西部警察』といえばこれだよな!”のイメージを確立した作品でもある。
ブラスとストリングスが奏でる勇壮なオープニングテーマ「ワンダフル・ガイズ」は、日本テレビ『大都会 PART III』のテーマ曲も担当していた高橋達也&東京ユニオンが演奏。『西部警察 PART-II』から後続の『西部警察 PART-III』(1983年)最終回まで約2年半の長きにわたって使用された名曲だ。『西部警察』の音楽制作を手がけたテイチクレコードのプロデューサー高柳六郎によると、『西部警察 PART-II』の劇伴作曲者である羽田健太郎と打ち合わせをした際、ビッグバンドが好きだった高柳から提案して高橋達也&東京ユニオンへの依頼を決めたという。オープニングテーマの候補曲は他にもあったが、メロディを聴いた高柳は一発で「ワンダフル・ガイズ」に決めたとのこと(2006年11月22日発売「西部警察 ミュージックファイル」のライナーノートより)。