『転職の魔王様』成田凌が示した究極の優しさ 白洲迅とフリーランスの転職めぐって対決

『転職の魔王様』成田凌が示した究極の優しさ

 勘違いしていられるうちは幸せだが、仕事は現実そのものだから、いつか壁にぶち当たる。石岡は慣れない職場で期待に応えようとして潰れてしまった。「あんたのせいだ」と罵る石岡に、天間は返す言葉がない。これまでの流れだと、ここで魔王の来栖が出てきて求職者を言葉で打ちすえ、迷いを断ち切るのだが、第8話に関して言うなら、石岡に向けた舌鋒の鋭さと言葉のつぶてはことさらに強烈で、観ているこちらにも刺さりまくった。

転職の魔王様

 フリーランスと正社員は働き方の「形」の違いでしかない。来栖によると「会社員だって敷かれたレールの上に乗ってるだけじゃダメ」。ビジネス書の受け売りで「自分の意志や武器を持たないまま、ただレールに乗ってるだけでは苦しくなるのは当然」であり、「ビジネス書の著者もキャリアアドバイザーもあなたの人生に責任を持つことはできません。誰かのせいにしても何も変わらないんですよ」と突き放した。

 言葉やシチュエーションは違っても、来栖は同じことを繰り返し述べてきた。だが、今度ばかりは容赦なかった。それは、相手がフリーランスだったことも関係がある。洋子(石田ゆり子)が言うように、新卒カードを手放した人間を社会はレールから外れた人間として見る。本人は自由だと思っても、ただ単に無軌道なままその日を生きているだけかもしれない。見たところ石岡には光るものがあって、ここで誰かが言わないと原石のままで終わってしまう。来栖の辛辣さは究極の優しさで、相手を見て言っているところが天間と違うところだ。

転職の魔王様

 注意したいのは、来栖が言う「責任」はひと頃さかんに吹聴された自己責任論と似て非なるものということだ。来栖が言おうとしているのは、自分の人生に答えを出すのは自分以外にいないということで、わかりやすいキャッチフレーズやネット記事の見出しに飛びつくなという警告でもある。そういう意味で、フリーのライターをメインに据えた『転職の魔王様』第8話は、日々大量の情報に翻弄される時代に、自身の人生をつかめというメッセージでもあった。

■放送情報
『転職の魔王様』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:成田凌、小芝風花、山口紗弥加、藤原大祐、おいでやす小田、前田公輝、井上翔太、井本彩花、石田ゆり子
原作:『転職の魔王様』『転職の魔王様2.0』額賀澪 (PHP研究所)
脚本:泉澤陽子、小峯裕之
音楽:横山克、橋口佳奈
プロデューサー:萩原崇、石田麻衣、櫻田惇平
監督:堀江貴大、丸谷俊平、保坂昭一
主題歌:milet「Living My Life」(SME Records)
OPENING SONG:LIL LEAGUE from EXILE TRIBE「Monster」(rhythm zone)
制作協力:ホリプロ
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/tenshokumao/
公式Twitter:@tenshokumao
公式Instagram:@tenshokumao

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