実写版『ONE PIECE』アニメ声優の吹き替えは大成功 要点はリアルな人間へのチューニング

『ONE PIECE』吹替版が成功した理由

 アニメ作品の実写化は、近年ではそう珍しいことではない。しかし今、アニメ版から実写版まで同じ声優が出演する異例の作品が注目を集めている。

 Netflixにて独占配信中のオリジナル実写ドラマシリーズ『ONE PIECE』は、吹き替え声優をアニメ版と同じ顔ぶれで揃えた珍しい作品だ。実写版では、ルフィ役の田中真弓を含む、声優陣の声の演技が海外キャストの動きに合わせてアップデートされている。アニメ版『ONE PIECE』を観たことがあれば、本作の声が“実写版”として、リアルな人間の語り口に調整された演技になっていることに気づいただろう。

 吹替版のアフレコではすでに完成した海外キャストの演技を意識して役作りをする必要がある。今回の実写版に感じた変化は、声優が役者の細かい表情の変化を読み取り、そこから吹き替えとして声の演技に取り組んだことの表れだろう。

 しかし、今回の吹き替えが通常の洋画の吹き替えと大きく異なる点は、アニメ版が1999年から現在に至るまでの24年間放送が続いている作品という部分である。もはや麦わらの一味の声を脳内再生できるレベルには、すでにキャラクターの声が定着している視聴者も多い。それは演じているキャストにとっても、キャラクターを演じる上で壁となったようだ。

 アニメに引き続き、実写版でサンジの声を担当している平田広明は「20年以上アニメをやっていると、そのテンポに慣れてしまう。同じことをしゃべっていても、(実写の方が)口数が多くなるので、サンジのニュアンスを壊さないで、声を入れるのは大変でした」(※)と語っている。しかし、さすがはキャリアを積んだレジェンド声優が集まっているだけある。実際に作品を観てみると、どのキャラクターも声のイメージを大きく損なうことなく、まさに実写版『ONE PIECE』として自然な形におさまっていたように感じている。

 特に、新田真剣佑のクールな演技に合わせた中井和哉のゾロの声は、実写ならではのキャラクターの良さを際立たせていた。モーガンの息子・ヘルメッポを相手に描かれるゾロのアクションシーンでは、「痛い目見るぞ」と中井が落ち着きながらも迫力を感じる声の演技を見せ、新田のアクションがゾロの圧倒的な強さを見せるというダブルコンボも。中井の演じるゾロは、アニメでの印象を引き継ぎつつも、あくまで自然に実写版へのアップデートがなされていた。

 さらにアルビダ役を松岡洋子、モーガン役を銀河万丈が吹き替えを担当するなど、ルフィと対峙するキャラクターたちもアニメ版の声優が抜擢されている。中でも、千葉繁による“道化のバギー”のハマり方には目を見張るものがあった。

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