韓国ドラマ『プロボノ』が問い続ける無限の可能性 リーガルものの新たな傑作に

韓国ドラマの一大得意ジャンルとして、弁護士や裁判官、検察官が主役を務める作品は数多く作られてきた。シンプルに弁護士という職業をのぞき見できるというジャンルものならではの面白さはもちろん、人間の罪と罰に向き合う任務から生み出される深いドラマとメッセージが多くの視聴者を惹きつけるのだろう。
現在Netflixで配信中の『プロボノ:アナタの正義救います!』(以下、『プロボノ』)は、そうした傑作の多いリーガルドラマの中でも、今生まれるべき傑作となる予感がしている。

高卒から汚職捜査部門最年少の主席判事にまで上り詰めたカン・ダウィット(チョン・ギョンホ)は、出世に執着するあまり権力にすりよってばかりだった。最高判事への切符をつかみかけたある時、何者かから多額の現金を受け取る動画のせいで収賄の疑いをかけられ、失職してしまう。そんな彼に、大手弁護士事務所オ&パートナーズの代表でかつての後輩ジョンイン(ユ・イヨン)が手を差し伸べるが、そこはパク・ギプム弁護士(ソ・ジュヨン)ら公益弁護士、通称「プロボノ」の部署だった。ダウィットはお金にならない庶民からの依頼に顔をしかめ、他のメンバーもプロボノの仕事を軽んじる彼に不信感しかない。しかし、険悪だった彼らも、依頼者からの難題を解決していくうち徐々に結束を強めていく。
本作には、ダウィットの失職のきっかけとなった収賄の証拠動画を捏造した黒幕を突き止めていく謎解きや、被告人代理人としてダウィットと対立するウ・ミョンフン弁護士(チェ・デフン)との法廷弁論バトル、チームワークで問題を解決していく痛快なバディといったエンタメ要素もふんだんにちりばめられている。第7話より本格的に登場した“ラスボス”、権力至上主義を貫くオ&パートナーズの設立者オ・ギュジャン(キム・ガプス)との全面対決も気になるところだ。だがやはり目を見張るのは、これまでも『悪魔判事』などリーガルドラマを手がけた元判事という肩書きを持つ脚本家ムン・ユソクが手がけたからこその、公益弁護士という題材で現実社会を鋭くえぐるストーリーだ。

「プロボノ」とは「公共善のために(Pro Bono Publico)」というラテン語を語源とし、専門家が仕事で培った知識やスキルを活かして行う社会貢献活動のこと。弁護士の無料法律相談が最も身近ではあるが、他にもIT、マーケティング、デザインなど様々な分野の専門家がNPOや地域団体などの課題解決を支援する取り組みを指し、ボランティアとはまた異なる活動形態と位置付けられている。
ドラマではプロボノメンバー各々が持つ、誰にも引けを取らない深い知識が問題解決に導いていく。未だ韓国でも馴染みがあるとは言えない職業を主人公に据えたことがまず画期的だが、さらに驚くのは依頼のテーマの新鮮さだ。たとえば第3話〜第4話の車椅子の少年ガンフンが社会で冷遇されるエピソードは、ここ数年のソウル地下鉄での車椅子使用者によるデモ(※1)を強く意識しているように感じる。
また最新エピソードに登場した“サセン”(アイドルなど芸能人の私生活を追いかける悪質なファン)と誹謗中傷を繰り返すネット配信者は、先ごろニュースになった、BTSのメンバーが悪質YouTuberを訴えた裁判(※2)を想起させる。その他にも女性の中絶の権利や在韓外国人への暴力など、韓国だけでなく世界的なホットイシューに毎回強く踏み込んでいる。社会批判をエンタメに昇華するのに長けている韓国ドラマといえども、ここまで意欲的なのは初めてなように感じる。『プロボノ』はある依頼とその裁判について2回に分けて取り上げる構成で、依頼者の登場と調査、裁判とその結末をきちんと描いているが、今なお実社会で議論の最中である題材を丁寧に見せようという思いもあるのだろう。





















