2025年の年間ベスト企画
平井伊都子の「2025年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 韓国エンタメにハリウッドの病が感染

リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2025年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、国内ドラマの場合は、放送・配信で発表された作品から、執筆者が独自の観点で10作品をセレクトする。第13回の選者は、ロサンゼルス在住のライター・平井伊都子。(編集部)
1.『ザ・スタジオ』S1(Apple TV)
2.『マッド・ユニコーン』(Netflix)
3.『I Love LA』S1(HBO/U-NEXT)
4.『プルリブス』S1(Apple TV)
5.『リハーサル -ネイサンのやりすぎ予行演習-』 S2 (HBO/U-NEXT)
6.『おつかれさま』(Netflix)
7.『未知のソウル』(Netflix)
8.『ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語』(Netflix)
9.『弱いヒーロー』class2(Netflix)
10.『チェア・カンパニー』S1(HBO/U-NEXT)
映画もドラマシリーズも冴えない1年だった。数は多いのに印象に残らない作品ばかり。それは、パンデミックやハリウッドのWストライキ、業界再編、AIの進撃などの複合的な要因によってプロジェクトに時間と資金がかけられなくなってしまったが、数だけ揃えて枠を埋めるために見切り発車作品が増えてしまったからではないか。ここに挙げた10本は、フェードアウトすることなく最終話まで見続けることができた作品たちだ。全てに共通するのは、脚本やコンセプトが丹念に練られ、制作意図が視聴者にも伝わっていること。最たる例が5位の『リハーサル -ネイサンのやりすぎ予行演習-』。「人生をリハーサルしよう」というS1のコンセプトはそのまま、S2ではより細部にこだわり、より壮大な結末に向かう。「飛行機事故はパイロットと副操縦士のコミュニケーション不足に起因?」という仮説から、最後はネイサン・フィールダーの大きな野望へと導かれていく。ここまでの資金と時間をかけた(くだらない)シリーズがあっただろうか? この作品が作られるハリウッドはまだ大丈夫なのかもしれない。
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第1位の『ザ・スタジオ』は映画業界視聴率100%、セス・ローゲンの観察眼とカメオキャスティング力は現在のハリウッド最高峰に位置する。ローゲンはインタビューで、「仮想敵にされている映画スタジオのトップだって、映画が好きで業界に入り、世間に忌み嫌われるような映画をわざわざ作ってるわけではないんですよ」と語る(※)。しかし、これは2025年8月の発言であり、この数カ月ですっかり変わってしまったハリウッドを、コンチネンタル・スタジオのマット・レミックはどう切り抜けるのか。ヴェネチア映画祭ではシナハン(下見)するローゲンがいたるところで目撃され、先日某所で打ち合わせをしていた際に聞き覚えのある大きな笑い声がして振り返ると、S2の撮影が行われていた。早くも2026年の期待ナンバーワン作品だ。
『ザ・スタジオ』は何部門受賞する? フレッシュさに欠ける第77回エミー賞主要部門を予想
現地時間9月14日に授賞式が行われる第77回エミー賞。アメリカのテレビ業界最大の権威でありお祭りのはずなのに、実際のところ全く盛…第2位の『マッド・ユニコーン』は、映画祭や賞レースで注目を浴び始めているタイ映画界の気鋭GDH 559が手がけたスタートアップ物語。実在するタイ初のユニコーン物流企業の創設から業界シェア奪取までをスピーディに描く。現実の苦味とキャラクター造形は映画『ブラック・ベリー』、出資者一族の『メディア王』風ドラマありで、世界の映像業界の流れをしっかり捉えているのが見事。























