アメリカ映画におけるハッピーエンドとは? “移民二世”が主人公の作品から読み解く

アメリカ映画におけるハッピーエンドとは?

 1492年にコロンブスがアメリカ大陸に到達して以降、ヨーロッパからの入植をはじめ、アメリカには世界各国から多くの人が移り住んだ。現在アメリカに住む人々は、先住民の子孫を除いて全員が移民やその子孫だ。しかし、近年特に“移民”として扱われているのは、1960年代ごろから現在に至るまでにアメリカにやってきた人々だ。彼らの多くはそれ以前の移民と同じように、アメリカに根を張り、二世、三世と世代を重ねている。

 2023年のアニメーション作品には“移民”を主人公に据えたものが目立つ。ディズニー&ピクサー最新作『マイ・エレメント』は、「もしも火・水・風・土のエレメントが住む世界があったら?」というファンタジーの枠の中で、主人公である火の女性エンバーが移民二世として描かれている。世界中で人気を誇るゲームキャラクターを映画化した『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の主人公であるマリオも、ニューヨーク・ブルックリンに居を構える移民という側面が強調されている。このほかにも、近年話題を集めた作品には、『私ときどきレッサーパンダ』(2022年)や『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022年)など、移民や移民二世の物語が多いことに気がつくのではないだろうか。

『私ときどきレッサーパンダ』©︎2022 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

 本稿では、なぜ彼らを描く映画が近年増えているのか、その理由と社会的な意義について考えていく。

「移民の国」アメリカ

 1776年に建国されたアメリカ合衆国には、1800年代になるとヨーロッパからの移民が押し寄せた。彼らの母国はイギリスをはじめ、ドイツ、イタリア、オーストリア、ハンガリー、ロシア、そしてスカンジナビアの国々など。彼らはそれぞれに同郷の者でネットワークを形成し、相互扶助の精神でコミュニティを作り上げていった。

 特にイタリア系はもともと団結意識が高く、多くの移民が流れ込んだニューヨークには、リトル・イタリーと呼ばれるイタリア人街もできた。その後、1960年代以降には南北アメリカ大陸、主にはメキシコからの移民が急増した。それと同時に、それまで横ばいだったアジアにルーツを持つ人々もアメリカにやってくる。国連の調査によると、2020年時点でアメリカの移民人口は約5063万人。アメリカの人口全体の15.30%に達するという。(※)

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』©2022 Nintendo and Universal Studios

 移民二世を描いた映画作品が増えたのは、単純に移民やその二世、三世が増えたから、と考えることができるだろう。作り手にも受け手にも、そうしたバックグラウンドを持つ人々が増えたのだ。では、彼らが語る物語にはどんな特徴があるのだろうか。

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