『復讐の記憶』は老人版『ジョン・ウィック』だ! テーマカラーの“赤”にも注目

『復讐の記憶』は老人版『ジョン・ウィック』

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、車を手に入れてドライブの楽しさを知ってしまった佐藤が『復讐の記憶』をプッシュします。

『復讐の記憶』 

 本作は、家族全員を理不尽な出来事で殺された認知症の老人・ピルジュと、老人の60年越しの復讐計画に巻き込まれた若者・インギュの姿を描いたもの。『工作 黒金星と呼ばれた男』で大鐘賞映画祭主演男優賞を受賞したイ・ソンミンが、特殊メイクを施し80代のピルジュ役、韓国版『ジョゼと虎と魚たち』やドラマ『二十五、二十一』などに出演したナム・ジュヒョクがインギュ役をそれぞれ演じている。

 この物語の面白さは、「過去の記憶」に縛られている主人公が、日に日に悪化していく脳腫瘍による“認知症”を患っており、「記憶力にハンデ」を持っているところにある。自分の記憶が長くないと悟ったピルジュは、彼が働いているバイト先の20代のインギュに1週間だけ運転手として協力してもらいたいと依頼をする。はじめは、自分が殺人に加担しているとも知らずポルシェを運転できることに興奮していたインギュだったが、ピルジュの本当の目的を知ってしまい、同僚としても尊敬していたピルジュを警察に引き渡そうとする。しかし、ピルジュの犯行現場の監視カメラ映像にインギュの姿が残ってしまったことで、インギュは協力せざるを得なくなってしまう。

 そんな2人は、日本でも東京を中心に展開しているアメリカンレストランバー「TGI FRIDAYS」でアルバイトをしており、このことが本作における重要なポイントとなっている。「TGI FRIDAYS」では、同僚のことをニックネームで呼び合う制度が実際にあり、作中でもピルジュは“フレディ”、インギュは“ジェイソン”と呼び合っている。それに加えて、2人が挨拶代わりに複雑なハンドシェイクを交わしたり、嬉しいことがあった時にはハグをしたり、インギュがオーバーリアクション取っていたりと、2人がアメリカ的な“バディ”として映るような演出がされていた。

 さらに、“家族の死から復讐へとひた走る男”という設定や、“無駄のない完璧な殺人”に見えるその脅威の描かれ方からは、ピルジュを映画『ジョン・ウィック』シリーズの主人公ジョン・ウィックにも重ねてみることができた。

 

 そして、ピルジュは、創氏改名の際に付けられた「清原」という名も持っており、本作において3つの名を持っている特異なキャラクターとしても読み解くことができる。「ピルジュ」という彼の本当の名は、作中ではほとんど登場しない。それに比較して、「清原」という名は、彼が所持している拳銃に掘られていたり、復讐相手に自分を名乗る際に使われており、「清原」を名乗る時の彼は、“過去への執着”を持った者として描かれている。また、「フレディ」という名は、彼のバディであるインギュといる時にのみ使用されており、「フレディ」である時のピルジュは、“今を生きている1人の人間”としてとして描かれている。このように、3つの名前の使い分けていることで、本作における“復讐”というテーマがより深化させられていると感じた。

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