『どうする家康』本多平八郎忠勝の武器は“地団駄”だ 山田裕貴のカッコよさと愛嬌を解説

『どうする家康』本多平八郎忠勝の愛嬌を解説

 ついに、本多平八郎忠勝が最終形態になった。

 鹿角をあしらった大兜を被り、今まで屠った人間を弔うための大数珠を下げ、腰には死んだ叔父・忠真(波岡一喜)の形見のひょうたんを吊るし、名槍・蜻蛉切を構えて仁王立ち。

「幾多の戦でかすり傷ひとつ負ったことなし。我こそは、本多平八郎忠勝!!」

 名乗りの口上もバッチリ決まり、そのあまりのカッコよさに、筆者は鳥肌が立った。

 ところが、「ここからは一歩も通さん!」と立ちはだかる際のフォルムは、まさしく子供(ガキ大将寄り)の“通せんぼ”であり、一気にかわいくなってしまった。秀吉側の敵兵も、気持ちなごんだのではないだろうか。

 この「強さ・カッコよさ」と「子供っぽさ・かわいさ」が、ケンカしながらもなんやかんやで同居しているところが、この平八郎の魅力である。それはそのまま、演じる山田裕貴の魅力でもある。

 NHK大河ドラマ『どうする家康』のレギュラーメンバーであり、後に“徳川四天王”のひとりとなる本多忠勝。初登場シーンから、すでにインパクト大であった。

 臆して戦場から逃げ出した松本潤演じる家康(当時は松平元康)を単身馬で追いかけ、槍を投げつける。たまたま外れたが、当たっていたら第1話にして最終話になるところだった。

 それでは終わらず、どてっ腹を蹴り、槍で横殴りにし、首根っこ掴んで戦場に連れ戻す。この時点で若干13歳、今なら中学1年生ぐらいの年頃である。

 謀反でもないのに主君にこれだけの狼藉を働き、しかも許されてしまうキャラは、長い大河の歴史でもなかなかいないだろう。

 なかなか家康を主君と認めず、タメ口を貫き、ひとりだけ長ランみたいな黒い長羽織を着て、アクの強い家臣団の中でも、最初から特に目立っていた。

 だが彼がもっとも目立っていたのは、その服装や言動ではなく、やはり戦場においてだ。

 彼の武器は、言うまでもなく“槍”だ。“蜻蛉切”と呼ばれる“天下三名槍”のひとつに数えられる逸品である。

 槍の使い方は3種類ある。「叩く」、「突き刺す」、そして「投げる」だ。だが、おそらく平八郎にとって命の次に大事な(あるいは命より大事な)蜻蛉切を、投げるわけにはいかない。

 だが例外的に、1度だけ平八郎が槍を投げるシーンがある。もちろん、蜻蛉切は投げない。大事な蜻蛉切は郎党に預け、死体からぶん取った槍を投げる。

 事の善悪は別として、その際のフォームが素晴らしい。砲丸投げの選手のように、一回転してから投げる。全身のバネに遠心力まで加えた、ものすごく躍動感のある遠投だ。見事に今川氏真(溝端淳平)の右肩に命中した。

 第1話における織田信長(岡田准一)の槍投げは、馬に乗ったまま無表情で上体の力だけで投げる。その短い描写だけで、信長の並外れた膂力および、「ああ、この人がボスキャラなんだな」ということがわかる、印象的なシーンだった。

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 だが、平八郎の槍投げも負けてはいない。その腕力および、それを120%活かし切る体の使い方。激情に任せて槍を投げる99%の若さと、それでも宝物は投げない1%の判断力。こちらも、平八郎をよく理解できるシーンだ。

 基本的に、戦闘シーンでは蜻蛉切を振り回して無双している。実にカッコいい。

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