神木隆之介は野山を駆けるルフィのよう? 『らんまん』にみるチームワークと仲間の理解
放送中の朝ドラ『らんまん』(NHK総合)の第95話で、主人公の槙野万太郎(神木隆之介)が口にしたひとことにハッとした。それは「わしは一人じゃない」というものである。
東京大学植物学教室の出入りを禁じられ、娘の園子が死去。造り酒屋である実家の「峰屋」という大きな後ろ盾を失い、ロシアのマキシモヴィッチ博士まで亡くなってしまった。万太郎は厳しい現実に直面し、植物学者としての道を歩む彼は孤軍奮闘を強いられていたのだ。しかし、実際のところ彼は“孤軍(=たった一人)”ではないことを私たちの誰もが知っていただろう。いやむしろ、一度として“独り”だったことはない。天真爛漫な性格の持ち主で、良き仲間に恵まれた彼は、さながら野山を駆けるルフィのようではないだろうか。
そう、ルフィとはもちろん、マンガ『ONE PIECE』の主人公であるモンキー・D・ルフィのことだ。
国民的なキャラクターとあって説明は不要かもしれないが、念のために記しておこう。ルフィとは大海原を旅する海賊にして、その頂点である“海賊王”を目指す男だ。現在の彼の仲間は9人。航海士に料理人、医者、音楽家など、まさに少数精鋭のクルーによって成り立っている。そんな彼は“一人じゃない”ことに自覚的である。
コミックスの第10巻に収録されている第90話にてルフィは、強敵である魚人のアーロンに対して「おれは剣術を使えねェんだコノヤロー!!! 航海術も持ってねェし!!! 料理も作れねェし!! ウソもつけねェ!! おれは助けてもらわねェと生きていけねェ自信がある!!!」と言い放っているのが象徴的だ。たしかに、彼にはできることよりもできないことのほうが多い。そもそも海賊でありながら、カナヅチでもあるのだから。仲間の存在なくして海を渡っていくことはできないのだ。