『らんまん』浜辺美波が仲居デビュー 岩崎弥之助が槙野家にもたらしたチャンスの種
本作に不可欠な貧乏エピソードだが、質屋への行き来もありきたりな描写で終わらせず、そこには次の伏線が仕込まれている。大切にしていた『南総里見八犬伝』一式を質入れし、みえの元へ赴いた寿恵子は、そのまま当夜の座敷に出た。帰りの遅い寿恵子を待ちながら、本を読み聞かせようと行李を開けた万太郎は本がないことに気付く。さすがに今回は万太郎も考え込んでしまった。寿恵子にとって『里見八犬伝』がどれだけ大事なものかは、万太郎が一番よく知っているからだ。目で見る家計の窮状は、なんとかしなければと決意させるのに十分で、この先の展開にも影響しそうだ。
料亭で働くことになった寿恵子を、万太郎は他の男に取られないかと心配する。座敷での出来事を楽しそうに話す寿恵子に対して、万太郎は気もそぞろで、必死に抑えながらも、高藤(伊礼彼方)の名前を出して「寿恵ちゃんがもしまたさらわれたり」したらと気を揉む。寿恵子の方は、夫の嫉妬心も独占欲も承知した上で、大丈夫だと念押しする。その上で「言いたいことがあったらはっきり言いますし、言いなりにはなりません」と伝えた。夫婦の営みを示唆する仲睦まじさの陰で、子どもっぽい万太郎と自らの意志で進む寿恵子が対比されており、こんなところにも本作のジェンダー観は表れている。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK