明治・大正を舞台とした作品なぜ増加? 『アンファル』『わた婚』『るろ剣』から考える
また、西洋文化と日本の文化が入り混じっていることから、ファンタジーとの親和性も高い。例えば、『わたしの幸せな結婚』や『アンデッドガール・マーダーファルス』では、異能力が活躍する。前者は文明の発展によって怪異が人に信じられなくなり、数が減少していることを物語に織り込んでいる。どことなく西洋の風を感じつつも、式紙など、和風の術が用いられるシーンが印象的だ。後者は、第1話では日本の見世物小屋が主な舞台で、ろくろ首や鬼など妖怪メインだったが、後に海外にわたってヴァンパイアの事件を解決している。日本人が海外に渡航することや、西洋の怪異について知識があることに関して、明治・大正という時代設定であれば「西洋文化が日本で流行していたから」という理由で筋が通る。この2作品のように、異能力という同一のモチーフを扱っていても、和と洋の比重に差をつけることで全く表情の違う作品になるという点は、明治・大正時代を用いる際の特徴ともいえる。
『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』は再リメイクのアニメということもあり、前述した作品とはまた毛色が違っているが、実際に起きた歴史上の事件や人物を登場させている点が面白い。漫画連載当時『週刊少年ジャンプ』には時代物のイメージがなく、売れ行きが心配されていたとも言われる。しかし後に大ヒットとなり、『銀魂』『鬼滅の刃』など、後年の作品にも時代物というテーマがまた違った形で受け継がれていく。「明治・大正の時代設定を『週刊少年ジャンプ』アニメにもたらした先駆者」という視点で見てみると、これまでと違った解釈ができるのではないだろうか。
最後に、時代設定と背景美術に関しても触れておきたい。明治・大正の頃に生まれた特徴的なものといえば、建造物も挙げられる。日本の登録有形文化財(建造物)の総数は13637件だが、その内の4304件が明治期に、2769件が大正期に建てられたものである。時代として一番長く続いた昭和期が4132件であることを考えると、いかに明治・大正期が歴史的に意義のある時代だったかが読み取れる。このように、現存する建造物が多く、背景美術の資料として選択肢が広いことも、この時代が選ばれる理由なのかもしれない。各地に建造物が残っているため、「聖地巡礼」として地域活性化に繋がるプロモーションを行う作品があっても面白そうだ。
■放送・配信情報
『わたしの幸せな結婚』
TOKYO MXほかにて放送中
TOKYO MX:毎週水曜23:30〜
サンテレビ:毎週水曜24:30〜
KBS京都:毎週水曜25:00〜
テレビ愛知:毎週水曜26:05〜
BS11:毎週木曜24:30〜
AT-X:毎週木曜21:00〜
※放送日時は変更になる可能性あり
Netflixほか各配信サイトにて、毎週水曜23:30〜地上波同時配信
声の出演:上田麗奈、石川界人、佐倉綾音、西山宏太朗、下野紘、桑島法子
原作:顎木あくみ(KADOKAWA/富士見L文庫刊)
原作イラスト:月岡月穂
監督:久保田雄大
設定・監修:阿保孝雄
シリーズ構成・脚本:佐藤亜美、大西雄仁、豊田百香
キャラクターデザイン:安田祥子
色彩設計:岡松杏奈
美術監督:片野坂恵美(インスパイア―ド)
美術監修:増山修
美術設定:菱沼由典、曽野由大、吉﨑正樹
プロップ:高倉武史、ヒラタリョウ、みき尾
撮影監督:江間常高(T2スタジオ)
3DCG監督:越田祐史(スタジオポメロ)
着物デザイン:HALKA
編集:黒澤雅之
音楽:Evan Call
音楽スーパーバイザー:池田貴博
音楽制作:ミラクル・バス
音楽制作協力:キネマシトラス/KADOKAWA
音響監督:小泉紀介
音響制作:グロービジョン
脚本開発協力:森本浩二
アニメーション制作:キネマシトラス
製作:「わたしの幸せな結婚」製作委員会
©2023 顎木あくみ・月岡月穂/KADOKAWA/「わたしの幸せな結婚」製作委員会
©2023 Akumi Agitogi, Tsukiho Tsukioka/KADOKAWA/My Happy Marriage Partners
公式サイト:https://watakon-anime.com
公式X(旧Twitter):@watashino_info
公式Instagram:@watakon_anime
公式TikTok:@watakon_anime