神木隆之介は野山を駆けるルフィのよう? 『らんまん』にみるチームワークと仲間の理解

『らんまん』万太郎は野山を駆けるルフィ?

 いっぽうの万太郎はというと、好奇心が旺盛で一度何かに夢中になると止まらなくなるのはルフィと似ているが、圧倒的に“できすぎる”人間だった。小学校を中退していながら英語はペラペラ。彼の知識量は山の緑のように豊かで、海の青のように深い。情熱的で弁も立つ。それに先述しているように、太い実家を持っていたことも大きいだろう。あまりにも多くのものを持ちすぎていたからこそ、これが周囲のサポートなくして成り立つものではないのだと気づくことができなかった。

 実際、植物学者の道への第一歩を踏み出すために東京へとやってきたばかりの頃には、相棒の竹雄(志尊淳)がつねにそばにいたし、波多野泰久(前原滉)や藤丸次郎(前原瑞樹)といった植物学仲間がいなければ現在の万太郎は存在しない。そしてもちろん、最愛のパートナーである寿恵子(浜辺美波)がいてこそ植物学者・槙野万太郎は奮闘することができている。ずっと「わしは一人じゃない」のだ。万太郎の天真爛漫な性格が周囲の人々を惹きつけ、誰もが彼の背中を押し、誰もが彼の手を掴み引き上げる。

 ルフィの仲間の一人である料理人にして参謀的な役割を担うサンジが、同じく仲間の一人であるウソップに対して口にする「誰にでもできる事とできねェ事がある」「お前にできねェ事はおれがやる。おれにできねェ事をお前がやれ!!!」という名ゼリフがある(コミックス第43巻の第414話)。万太郎の仲間たちはこうは口にせずとも、誰もがこのことを理解しているのだろう。

 ルフィは同じ船に乗るクルーだけでなく、広い海のどこかの誰かが彼のことを想い、密かにサポートしていたり、あるいはふいに登場しては助けてくれたりする。万太郎も同じ。十徳長屋の住人たちも、故郷である高知の人々も、海を隔てた植物学者たちも、彼を支える仲間なのである。チームワークがあってこその槙野万太郎。やはり彼は野山を駆けるルフィのようだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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