『最高の教師』『ごくせん』『GTO』 「あなたの担任」は名学園ドラマの“伝家の宝刀”
反町隆史が主演を務めた1998年版の『GTO』でもそのような台詞がたびたび登場し、生徒たちにとって鬼塚英吉(反町隆史)がかけがえのない担任教師へと変化していく。特に第10話で、ずっと反抗をつづけていた相沢みやび(中村愛美)の窮地を救った鬼塚が、自分の進退がかかった重要な用事をすっぽかして雅の大切なネックレスを探すために夜通し遊園地のなかを這いつくばるシーン。そこで出てくる「俺はお前の担任だからよ」という台詞は、このドラマの流れを大きく変える随一の名シーンを生みだしたのである。
学園ドラマ、それも生徒にはっきりとした自我が確立し、友人や家族といった周囲の人々と自分との関係性に思い悩む高校生を描く作品であれば、教師が彼ら彼女らにとってどういう立場なのかを行動も伴いながら示してくれることは何より重要なファクターだ。九条が生徒たちに「なんでもします」というだけでは単なる従属関係になりかねないが、そこにはっきりと「私はあなたたちの担任教師だから」と理由付けがされるだけで、それは確かに“教育”になり得るのだ。
もうひとつ『最高の教師』を“学園ドラマ”たらしめる要素は、生徒たちを取り巻く問題に教師が向き合いながら、正解とまではいかずとも変化の道筋を示すことであろう。それは『3年B組金八先生』(TBS系)の時代から守りつづけられてきた学園ドラマにおける普遍の様式美である。いわずもがな『金八先生』では、校内暴力から学級崩壊、いじめに薬物問題に家庭問題にいたるまで、その時代の中高生たちに身近なテーマをシリーズごとに大きく取り上げられてきた。
すでに『最高の教師』でも、第1話では鵜久森(芦田愛菜)に対するクラスぐるみでのいじめに、第2話では瓜生(山時聡真)の家庭問題に踏み込んできたわけだが、こう考えてみると中高生を取り巻く問題というのはただ増える一方で、何十年も前から何も解決していないことがよくわかる。それだけに、なにかと積み重なったこの時代に“学園ドラマ”をやることは、それだけシビアな課題に正面から向き合わなくてはならないのだろう。
同じスタッフ陣によって作られた『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)も菅田将暉演じる教師の柊一颯を軸にした“学園ドラマ”でありながらも、生徒たちが学校に閉じ込められることと、わずか10日間の物語というふたつのシチュエーション的な制約を与えることで、SNS社会の問題という現代の大きなテーマを扱うことに成功し、副次的に教室内にはびこるいくつかの問題にも触れることを可能にした。
『最高の教師』の場合、タイムリープという突飛なSF要素は導入段階で存在しながらも以後の展開ではどうしたってオーソドックスな“学園ドラマ”の定石をなぞっていくほか方法はない。すでにいくつもの現代的な問題を一話ごとに取り扱うという、かなりヘビーなドラマになっているのもそのためだろう。だからこそ、生徒役キャストの大成を待たずとも“新時代の学園ドラマ”という放送前に銘打たれたフレーズに偽りのない価値を有しており、すでに九条里奈=松岡茉優は“学園ドラマ”に欠かせない記憶に残る教師となりつつある。
■放送情報
土曜ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:松岡茉優、芦田愛菜、奥平大兼、加藤清史郎、當真あみ、茅島みずき、山時聡真、本田仁美(AKB48)、窪塚愛流、福崎那由他、田牧そら、山下幸輝、寺本莉緒、萩原護、詩羽、田中美久(HKT48)、浅野竣哉、丈太郎、柿原りんか、橘優輝、莉子、田鍋梨々花、夏生大湖、藤嶋花音、岩瀬洋志、阪本颯希、岡井みおん、藤﨑ゆみあ、のせりん、川本光貴、白倉碧空、細田善彦、長井短、サーヤ(ラランド)、犬飼貴丈、荒川良々、松下洸平
演出:鈴木勇馬
プロデューサー:福井雄太、鈴木努、秋元孝之
チーフプロデューサー:田中宏史
主題歌:菅田将暉「ユアーズ」
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/saikyo/
公式Twitter:@saikyo_ntv
公式Instagram:@saikyo_ntv
公式TikTok:@saikyo_ntv