『転職の魔王様』はキャラクターの心の成長を描く 相手の長所を探す成田凌の視点

キャラクターの心の成長描く『転職の魔王様』

 すごいと思ったのは、欠点と思われた笹川の性格がそのまま強みになっていたことだ。何か特別なことをしたわけではない。「ずっと笑顔でいられる社員はきっと優秀」「周りに気を配れる人は優秀な人」というヒントもあったが、周囲に巻き込まれがちな笹川は、土壇場で自分の転職よりもチームを優先し、同僚から「仕事を投げ出さない」と褒められる。会社への忠誠心や計算ずくの行為ではなく、単なる人の良さかもしれないけれど、その瞬間、笹川は全員にとっての利益という価値判断を下していた。理不尽な上司に抑圧されていただけで、きっと笹川はこれまでも自分のやるべき仕事をやってきたのだ。

 千晴(小芝風花)と来栖による“飴と鞭”がうまい具合に作用し、笹川が自身と向き合う過程は自然な軌跡をたどっており、本作がキャラクターの心の成長を描くものであることを物語っていた。冒頭の疑問に戻ると、明確な目的意識をもって離職することは肯定されていいし、会社にとどまるとしてもそこに意味を見出せるかは自分次第ということになる。

 各話のエピソードを通して“魔王”の正体が明かされていく本作。来栖は笹川に自身の若い頃を重ねて見ており、助けたいという思いが歯に衣着せぬ表現となった。「合わない仕事は人を殺す」は来栖自身の実体験で、より良く生きるための手段であるはずの仕事が人間を追い詰めてしまうことに全力で「ノー」と叫んでいる。辛辣な言葉の裏で、相手の良いところを探す来栖の視点は明確だ。第4話では、来栖の過去を知る人物が登場するということで、魔王降臨につながるエピソードに期待したい。

■放送情報
『転職の魔王様』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:成田凌、小芝風花、山口紗弥加、藤原大祐、おいでやす小田、前田公輝、井上翔太、井本彩花、石田ゆり子
原作:『転職の魔王様』『転職の魔王様2.0』額賀澪 (PHP研究所)
脚本:泉澤陽子、小峯裕之
音楽:横山克、橋口佳奈
プロデューサー:萩原崇、石田麻衣、櫻田惇平
監督:堀江貴大、丸谷俊平、保坂昭一
主題歌:milet「Living My Life」(SME Records)
OPENING SONG:LIL LEAGUE from EXILE TRIBE「Monster」(rhythm zone)
制作協力:ホリプロ
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/tenshokumao/
公式Twitter:@tenshokumao
公式Instagram:@tenshokumao

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