『らんまん』要潤演じる田邊の心変わりに違和感? ムジナモがもたらした幸せな時間
万太郎(神木隆之介)が小岩の池で見つけた根がない水草は、世界的に珍しい水生植物だった。
『らんまん』(NHK総合)第17週のタイトルになった「ムジナモ」。第84話で、万太郎はムジナモを植物学教室に持ち帰る。見たことのない水草を前にして、波多野(前原滉)や藤丸(前原瑞樹)と植物談義が始まる。徳永(田中哲司)や大窪(今野浩喜)も加わり、盛り上がっているところに田邊(要潤)がやってくる。
田邊は未知の植物に吸い寄せられる。田邊には心当たりがあった。ダーウィンの『Insectivorous Plants』に記載されたアルドロヴァンダ・ヴェシクローサ。イシモチソウ科の多年草の水生植物で、一属一種の食虫植物である。田邊によると、アルドロヴァンダ・ヴェシクローサはインド、ヨーロッパ、オーストラリアでしか発見されたことがなく、日本での報告は初めて。貴重な発見を前に、田邊は万太郎に論文を書くように指示した。
「見つけた者が報告する。当然だろう?」
ためらう万太郎に田邊はこう言い、詳細な植物画を添付するように命じた。『日本植物志図譜』を出版したとはいえ、大学を出ていない万太郎に、田邊自身が後ろ盾となってアカデミズムへの扉を開く意味があった。
万太郎に対して、田邊は複雑な感情を抱いている。その田邊が、プラントハンターとして仕えろという誘いを断った万太郎にチャンスを与えたのは、画工の野宮(亀田佳明)の進言も影響しているだろう。第83話で、野宮は万太郎に対する温情を求めた。田邊は、万太郎の実力と植物への情熱が本物であると知っている。万太郎のこれまでの貢献を考えれば、なんらかの処遇を用意しても不思議ではない。何が言いたいかと言うと、この一事だけで田邊が良い人になったと即断できないということだ。