『らんまん』激昂する田邊に立ち向かった野宮の覚悟 「互いに励んではいけませんか?」
『らんまん』(NHK総合)第83話で、楽しそうに植物採集をする万太郎(神木隆之介)を見た福治(池田鉄洋)は、ゆう(山谷花純)に自分の胸の内を明かした。楽しければ楽しいだけ、どこか怖くなると話す福治に、ゆうは万太郎たちを眺めながらこう言った。
「楽しむこと、もう怖がらなくていいのよ。たとえ悪いことが起こっても、その先できっとまた笑えるんだから」
十徳長屋に万太郎がやってきてから、彼らの日常は変わった。植物研究に情熱を注ぐ天真爛漫な万太郎に触れたことによって、「楽しい」は特別なことではなくなった。万太郎に影響され、福治は娘・小春(山本花帆)を育て上げるだけでは足りない、と思えるようになった。「うんと幸せにしてやりてえ」と話す福治に、ゆうも離れていても子どもの幸せを願いたいと打ち明けた。
楽しければ楽しいだけどこか怖くなる、と言う福治。
それを聞いたゆうは、万太郎たちを眺めながら言いました。「楽しむこと、もう怖がらなくていいのよ。たとえ悪いことが起こっても、その先できっとまた笑えるんだから」#朝ドラらんまん#池田鉄洋 #山谷花純 pic.twitter.com/fDEr8iE3tB
— 連続テレビ小説「らんまん」 (@asadora_nhk) July 25, 2023
万太郎の存在は、さまざまな人の心を動かす。田邊(要潤)も例外ではない。そして第83話では、画工の野宮(亀田佳明)にも変化があった。
海外から槙野万太郎に関心を寄せる手紙が届き、田邊は顔を曇らせる。そこへ野宮が植物画を持ってやってきた。野宮は万太郎のような植物画を描くよう命じられている。万太郎に後れを取りたくない田邊は「野宮、もっと腕を磨け。槙野を超えろ」と奮起を促す。しかし野宮は「槙野さんと並び、互いに励んではいけませんか?」と言った。
熾烈な競争が繰り広げられる研究の世界に生きる田邊は、小学校中退という学歴の万太郎と肩を並べることを好ましく思わない。「絵に経歴は関わりがありません」と訴える野宮に、田邊は「だから何だ? クビになりたいのか?」と苛立ちを見せる。それでも野宮は引き下がらなかった。植物学教室で行われている肉眼では見えないものの研究には、顕微鏡の奥の世界を精密に描ける植物画家が必要だと、野宮は田邊の目を見て嘆願する。
田邊と野宮の関係は対等ではない。田邊からスカウトされ、専属の画工として働いている野宮は、かつて万太郎に「教授の役に立つうちはここにいられますから」と言っていた。野宮は“田邊教授の意向”に添わなければならない立場にいる。けれど野宮は、万太郎を遠ざける田邊の意向に背くことを決めた。