『らんまん』を彩る食べ物たち 牛鍋、山椒餅、揚げ芋など印象的な“消えもの”を振り返る
その後、東京に引っ越したばかりで何かとお金が入用になるというのに真っ先に牛鍋屋に入るほどのハマりっぷりを見せた万太郎。だが、まだまだ庶民にとっては贅沢な食べ物だったに違いない。そんな牛鍋を万太郎や東大の学生たちが囲み、夢を語らうシーンは彼らが日本の未来を背負っていく存在であることを示している。
万太郎が十徳長屋のりん(安藤玉恵)を誘い、竹雄が働く西洋料理屋に連れていくシーンも印象的だ。ここでは使い慣れていないナイフとフォークでステーキと格闘するりんと、植物学教室で孤立していることに悩む万太郎を対照的に見せ、誰だって慣れないものに対峙した時には戸惑ってしまうことを教えてくれた。また、改めて注目したいのはステーキの付け合わせだ。現代では人参やブロッコリーをよく見かけるが、本作ではブロッコリーの代わりに青菜が添えられている。これは当時まだ、日本でブロッコリーが食べられていなかったため(※2)。画面に映るのは一瞬で見逃してしまいがちだが、気づく人が気づいた時に違和感を抱くことがないよう細部までこだわって設定されているのだ。
他にも、万太郎と寿恵子の縁を結んだカルメ焼きなど、すべての“消えもの”が意味を持って画面に映し出される『らんまん』。撮影の道具とはいえ、見た目だけではなく美味しく食べられる味に作ってあるようで、キャストの幸せそうな表情も見ものだ。放送も残すところ、あと約2カ月。これから時代は激動の大正・昭和へと突入していく。その中で人々の食文化がどのように変化していくのか。ぜひ本作の美術チームが担当する“消えもの”に注目してほしい。
参照
※1. https://www.nhk.or.jp/kochi/lreport/article/000/73/
※2. https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/original.html?i=39139
■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK