『インディ・ジョーンズ』最新作、北米で首位陥落 第3位には物議を醸すヒット作が登場
そして第3位にランクインしたのが、すでに映画ファンやジャーナリストの間で物議を醸している問題作『Sound of Freedom(原題)』。独立記念日の7月4日に公開され、6日間で4020万ドルを稼ぎ出した本作は、性的人身売買から子どもたちを救うべく、元特別捜査官が任務に乗り出す実話アクションスリラーである。
主演は『パッション』(2004年)、『シン・レッド・ライン』(1998年)のジム・カヴィーゼル、監督・脚本は『リトル・ボーイ 小さなボクと戦争』(2015年)のアレハンドロ・モンテベルデ。本作が物議を醸しているのは、主にこの2人の関与に起因する。そもそもモデルとなった人物と組織が法的・倫理的に問題があると指摘されているほか、カヴィーゼル&モンテベルデがQアノンの支持者だといわれているのだ。
事実として、本作は保守系メディアの支援を受けており、配給・宣伝に関わるクラウドファンディングにはそれらのメディアも出資していたことが判明している。映画自体は2018年に完成し、当初は20世紀フォックスから配給予定だったが、ディズニーによる買収を受けてお蔵入りとなり、5年を経てインディペンデント映画会社・Angel Studiosから配給された。
こうした背景のほか、キリスト教的側面が強い映画でもあるためだろう、本作は白人の保守層から大きな注目を浴びており、それが予想外のヒットにつながったとみられる。しかし、リベラル系メディアは公開前から「Qアノン的スリラー」や「Qアノン向け映画」といった形容で本作を紹介。本編にQアノンや陰謀論に関する直接的・間接的言及はないため、こうした取り上げられ方にも一部では反発が起きている。
さらに興味深いのは、意外なほど作品としての評価が高いことだ。Rotten Tomatoesでは批評家スコア76%・観客スコア99%。出口調査に基づくCinemaScoreでは、なんと最高評価の「A+」を叩き出した。業界でも「現在のハリウッドが敬遠しがちな、現代の恐るべき犯罪を芸術的に描いた切実な映画だ」と称えられ、ヒットの背景には「自分の価値観や信念を表現するエンターテインメントを求めていた観客たちの需要」があると分析されている。この映画、果たしてどう観るか……より広い評価を仰ぐためにも、日本でのリリースを望むばかりだ。
今週は、第6位に『クレイジー・リッチ!』(2018年)の脚本家アデル・リムによる初監督作品『Joy Ride(原題)』も初登場。『BEEF/ビーフ』(2023年)のアシュリー・パーク、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022年)のステファニー・スーらが共演したコメディ映画だが、初動成績は予測を下回る585万ドルとなった。アジア系アメリカ人の女性たち4人が、そのうち1人の生みの親を探す旅に出る物語で、Rotten Tomatoesでは批評家スコア91%を記録。CinemaScoreでは「B-」とまずまずの成績だ。
そのほか、ディズニー&ピクサー最新作『マイ・エレメント』は、今週も前週比-20.8%という堅実な成績をキープして第4位にランクイン。北米興収は1億919万ドルで、『ザ・フラッシュ』(1億516万ドル)を粘り勝ちで抜いたほか、世界興収は2億5189万ドル。製作費2億ドルの回収にはもう少し時間がかかりそうだが、ピクサー史上ワースト級だった初動とは裏腹に、ここからピクサーブランドの復活を期待したくなる推移だ。
第5位『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』は北米興収3億5764万ドルで、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』の3億5757万ドルを超え、現時点で今夏最高のヒット作となった。いよいよ7月12日に北米公開となる、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』の猛追から逃げ切ることができるか?
北米映画興行ランキング(7月7日〜7月9日)
1.『Insidious: The Red Door(原題)』(初登場)
3265万ドル/3188館/累計3265万ドル/1週/ソニー
2.『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(↓前週1位)
2650万ドル(-56.1%)/4600館(変動なし)/累計1億2120万ドル/2週/ディズニー
3.『Sound of Freedom(原題)』(初登場)
1821万ドル/2852館/累計4020万ドル/1週/Angel Studios
4.『マイ・エレメント』(↓前週3位)
960万ドル(-20.8%)/3440館(-210館)/累計1億919万ドル/4週/ディズニー
5.『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(↓前週3位)
800万ドル(-33.4%)/3023館(-382館)/累計3億5764万ドル/6週/ソニー
6.『Joy Ride(原題)』
585万ドル/2820館/累計585万ドル/1週/ライオンズゲート
7.『No Hard Feelings(原題)』(↓前週4位)
525万ドル(-33.2%)/2686館(-522館)/累計4041万ドル/3週/ソニー
8.『トランスフォーマー/ビースト覚醒』(↓前週5位)
500万ドル(-32%)/2475館(-377館)/累計1億4672万ドル/5週/パラマウント
9.『リトル・マーメイド』(↓前週7位)
350万ドル(-35.1%)/2080館(-350館)/累計2億8903万ドル/7週/ディズニー
10.『Ruby Gillman, Teenage Kraken(原題)』(↓前週6位)
280万ドル(-49.1%)/3408館(+8館)/累計1159万ドル/2週/ユニバーサル
(※Box Office Mojo調べ。データは7月10日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります)
参照
https://www.boxofficemojo.com/weekend/2023W27/
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/insidious-red-door-sinks-indiana-jones-box-office-1235531618/
https://variety.com/2023/film/news/box-office-insidious-5-dethrones-indiana-jones-5-1235664783/
https://variety.com/2023/film/box-office/sound-of-freedom-box-office-success-1235664837/
https://deadline.com/2023/07/box-office-insidious-the-red-door-indiana-jones-1235431682/
https://deadline.com/2023/07/insidious-the-red-door-indiana-jones-box-office-1235432691/
■公開情報
『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』
全国公開中
監督: ジェームズ・マンゴールド
出演:ハリソン・フォード、フィービー・ウォーラー=ブリッジ、アントニオ・バンデラス、ジョン・リス=デイヴィス、マッツ・ミケルセン
製作:キャスリーン・ケネディ、フランク・マーシャル、サイモン・エマニュエル
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス
音楽:ジョン・ウィリアムズ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
原題:Indiana Jones and the Dial of Destiny
©2023 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.