『あなたがしてくれなくても』を成立させた俳優陣の繊細な芝居 みちの選択も納得の結末に
本作は役者の演技やカット割りが魅力的で、ストーリーもさることながら、映像作品として、見応えのあるものに仕上がっていた。
それは、みちの空白の数カ月と全話のダイジェスト映像が詰まった「特別編」を観るとよくわかる。第1話冒頭で雨の中、帰ってきたみちと陽一の脱衣所でのやりとりや、社員旅行でみちと誠が一線を越えそうになる場面、誠とみちの浮気を疑った楓が、みちの会社に訪れて昼食に誘う「地獄のランチ」など、印象的な映像が本作には多数存在する。
最終話もみちと陽一が影絵を楽しむ場面が素晴らしかったのだが、こういったシーンに引き込まれるのは、各登場人物の行動と感情が、必ずしも一致していないからだろう。
だから本作は繰り返し観ても面白く、観る度にみちや陽一に抱く印象が変わっていく。
陽一を演じた永山瑛太を筆頭に、俳優陣の芝居はどれも素晴らしかったが、各登場人物の多くは自分がどういう気持ちでいるのかわからない状態でモヤモヤしており、だからこそ衝動に任せて思いがけない行動をとってしまう。4人とも糸の切れた凧のように心が不安定でふわふわと漂っていて、一番理性的に見える楓ですらも、自分の気持ちがわかっていない。
だからこそ、毎週ヒヤヒヤしながら本作を観ていたのだが、そんな不安定な心情を演じる俳優陣の繊細な芝居を捉えた美しい映像から醸し出される色気こそが、最大の見どころだったのではないかと思う。だから、みちの選択は意外ではあるが納得できた。曖昧で不安定な人の心を描いてきた本作に相応しい結末である。
■配信情報
木曜劇場『あなたがしてくれなくても』
FODにて配信中
出演:奈緒、岩田剛典、田中みな実、永山瑛太、さとうほなみ、武田玲奈、宇野祥平、MEGUMI、大塚寧々ほか
原作:ハルノ晴『あなたがしてくれなくても』(双葉社)
脚本:市川貴幸、おかざきさとこ、黒田狭
演出:西谷弘
プロデュース:三竿玲子
主題歌:稲葉浩志「Stray Hearts」(VERMILLION RECORDS)
挿入歌:稲葉浩志「ダンスはうまく踊れない」(VERMILLION RECORDS)
音楽:菅野祐悟
©︎フジテレビ
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