2023年は森七菜の時代になる 月9初主演『真夏のシンデレラ』で演技の価値観を覆すか

『真夏のシンデレラ』森七菜の時代が到来する

 この2023年は、俳優・森七菜の時代になる。そうだ、思い切って言ってしまおう。彼女こそがこれからの時代をつくる俳優なのではないかと感じている。この1年は彼女の出演作の配信、公開、放送が相次ぎ、森のことを観ない日はないくらいだ。しかし私が2023年を“俳優・森七菜の時代”とする理由は、彼女のメディアへの露出度とはまた別のところにある。彼女が俳優として、さまざまな価値観を覆す存在となりそうだからである。いや、もうすでになりつつあるのだろう。

 まずは今年の森の活躍ぶりを確認してみたい。彼女の快進撃は、是枝裕和監督によるNetflixドラマ『舞妓さんちのまかないさん』からはじまった。同作は京都の花街を舞台に舞妓さんたちの共同生活を描いたもので、そこで欠かすことのできない「まかない=食事」をつくる人物を森は演じた。同い年の出口夏希とのダブル主演作で、配信開始から早くも半年が経つもののいまだに話題作である。この話題の鮮度を保ったまま、5月には映画『銀河鉄道の父』が公開。宮沢賢治とその父の関係を描いた同作において森は、賢治の妹・トシを演じた。トシは慈愛と包容力に満ちた女性で、森は先輩俳優たちを相手に凄みすら感じさせる好演で渡り合ってみせている。

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 現在は奥平大兼とのダブル主演映画『君は放課後インソムニア』が封切られて間もない。こちらでは現代の高校生に扮し、タイトルから感じられるとおりの、いやそれ以上の、青春劇を展開させているところだ。そしてこの7月からは主演ドラマ『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)がはじまる。豊富なキャリアを誇る間宮祥太朗とのダブル主演とはいえ、あの「月9」での主演。俳優・森七菜はたしかに“トレンディ”な存在ではあるかもしれない。しかし、時代を象徴するような作品が勝ち取ってきた「月9」の枠での主演となると、これが意味するものはとても大きい。つまり森は、いまのこの時代を象徴するような作品を、いまのこの時代を象徴するようなキャラクターを、背負おうとしているのである。そうだ、やはりこの2023年は、俳優・森七菜の時代になるのだ。

 とはいえ、デビューからまだ6年の森は、特に2019年以降はつねに“時代の顔”であり続けてきた。メガヒットした劇場アニメーション『天気の子』(2019年)でヒロインの声を務め、2020年は岩井俊二監督による『ラストレター』にて一人二役で重要な人物を演じ分けた。さらにこの年はプライムタイムに放送された連続ドラマ『この恋あたためますか』(TBS系)で主演。デビューから3年で連ドラの主演だなんて、まるでマンガやアニメの世界の話である……。そして2021年には少女マンガを原作とした映画『ライアー×ライアー』である種の一人二役をまたも演じている。

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 ここ数年を振り返ってみると、やはり森が時代の中心に立っていたことが分かる。そんな中でもこの2023年は数が違う。しかもどれもが彼女の代表作となりそうなものばかり。そしてこの流れによって、俳優・森七菜の時代が到来する。

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