『らんまん』を象徴する多くの草花 寿恵子の人生をあらわす花にみる成長と冒険

『らんまん』寿恵子の人生をあらわす草花とは

 連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合)の第11週となる「ユウガオ」が放送された。初回放送からこれまでに、多くの草花が作品をにぎわせ楽しませてくれた『らんまん』。些細なシーンにも花々がさりげなく画面を彩り、万太郎(神木隆之介)と共に我々視聴者の心をも明るくさせてくれた。そんな草花は、時として登場人物たちにとって人生の道しるべとなり、人生そのものをあらわす重要なモチーフにもなった。

 中でも今週、大活躍を見せた寿恵子(浜辺美波)になじみの深い花といえば、ボタン、バラ、ユウガオだろう。

ボタン

 万太郎が寿恵子に初めて渡した植物画がボタンであった。そしてそのボタンの絵は、好奇心旺盛な寿恵子の背中を押す大切な一枚になる。

「ボタンを授けられた者は見知らぬ旅に出るんです」

 まだ幼さが残る表情でキラキラと瞳を輝かせ嬉しそうに話す寿恵子がなんとも愛らしい。『里見八犬伝』をこよなく愛する寿恵子にとって、ボタンの花は特別な意味を持っていた。ボタンの形のあざを持つ八犬士のごとく、見知らぬ世界に旅立とうと決意する寿恵子は、まさに冒険の入り口に立っていた。自らの意思でそこに立ち、夢中になれるものに没頭する寿恵子のキラキラと輝くようなエネルギーがまぶしい。ダンスの練習シーンで登場した深紅のドレス姿の寿恵子は「百花の王」と呼ばれるボタンにまけない絢爛さで、まばゆい魅力を放っていた。

バラ

 万太郎と寿恵子が偶然の再会を果たした西洋音楽の演奏会で歌われていたのが「ザ・ラスト・ローズ・オブ・サマー」だ。この曲には「夏の終わりにたった一輪だけ残ってしまったバラ」に例えられた歌詞が登場するのだが、そこには「愛する者をなくして誰がたった一人、生きられようか」という意味が込められている。この歌詞の意味を寿恵子に教えたのが万太郎であり、バラは寿恵子にとっても大切な意味を持つ花となる。

 だが無神経な高藤(伊礼彼方)たちに徐々に追い詰められ逃げ場をなくしつつあった寿恵子は、いっそのこと万太郎を忘れようと、もらったバラの絵を破ろうとするのであった。2人の思い出ごと消し去ろうとした寿恵子だが、到底破ることなどできず。切ない涙を流し両手を絵の上に重ねる寿恵子の苦しみが切々と伝わり胸が締め付けられる思いだった。

 実は、バラの花は咲かせることが非常に難しいといわれる植物。今にも壊れそうな寿恵子の繊細な恋心に重なり、その美しさがなおさら悲しかった。

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