『王様に捧ぐ薬指』橋本環奈、綾華として“初めての感情”を表現 東郷との幸せを願って
『王様に捧ぐ薬指』(TBS系)で自分の振る舞いや東郷(山田涼介)の態度に一喜一憂する綾華(橋本環奈)を観ていたら、最初の頃、綾華が東郷に「どうもー! 悪女でーす!」と半ばやけっぱちのような自己紹介をしていたことを懐かしく思い出した。
東郷も、綾華との関係が“契約結婚”という気持ちの伴わないものだったからか、はじめは綾華と一緒にいることを嫌がるような素振りを見せていた。そんなふたりのやり取りはまるでコントのように軽妙で、このドラマはラブコメといいつつ、恋愛になるようでならないコメディドラマなのだと思っていた。それがいつの間にか、ふたりの深い愛情を感じられる恋愛ドラマとなっている。
出会った当初の強気な態度も嘘のように、東郷は綾華を甘やかすようになったが、逆に綾華はよく怯えるようになってしまった。美人すぎるがゆえに、妬まれたりトラブルに巻き込まれたりしてきた綾華は、きっと悪女を演じることで自分の心を守り、傷つかないようにしてきたのだろう。本当に悪女だったら、好きではない人とキスをしたくらいでひどく動揺したりはしない。鉄の鎧をつけ、ガチガチの臨戦態勢だった綾華の心は、東郷によって少しずつほぐされ今や素の心になっているのではないだろうか。綾華が自分の心に素直になり、東郷の愛情を受けとるようになったのはいいことだが、ほんの少し傷つくことさえも怖がるようになってしまった。
その綾華の心情の変化にあわせて、演じる橋本環奈の表情も絶妙に変化している。“契約結婚”をした“契約妻”の綾華は、自信たっぷりでありながらにこやかで、華やかさもあった。東郷の夫婦生活は彼の会社の広告の一部になるから、当たり前のことなのかもしれないが、この時の綾華は、仕事をしているインフルエンサーのようだった。だが、本当の意味で東郷と夫婦になってからは、そこにしゅんとした表情や苦しげな表情がプラスされ、人間らしさが加わっていった。壁にぶつかり、思い悩む綾華の姿は時折、捨てられた子犬のようにも見え、暖かい毛布に包んで優しく抱きしめたくなってしまう。