『良くも、悪くも、だって母親』イ・ドヒョンが“千の顔”を見せる 熱いキスで有終の美
ガンホが7歳に戻っていた頃に、ヨンスンが必死で教え込んだ「アイゴーアイゴー(悲しい、悲しい)」は、韓国人が悲しいとき、さみしいとき(腹ただしいとき、嬉しいときにも使う)に言う悲嘆を表す言葉だ。ヨンスンは自身の葬式で、ガンホに「アイゴーアイゴー」と嘆くよう教えていたのだった。それを忠実に再現する、ガンホの「アイゴー」の嘆き。ここでずっとヨンスンを励ましてきたスマホの着メロである、ユン・ハンギの「ナヌンヘンボカムニダ(「私は幸せです」)が流れてくる。「悲しい、悲しい」と嘆くガンホに向かって、ヨンスンがスマホの着メロを通して、「私は幸せです」と呼び掛けてくる。それを聞いたガンホとチョウリの里の人たちは、ともに「私は幸せです」を合唱する。
ヨンスン亡き後、ガンホはヨンスンからの手紙を見つける。ヨンスンの想いをしたためた手紙には、ガンホへの愛が溢れている。「今度は良い母になりたい」と思いを吐露した“悪い母”ヨンスンの手紙と、彼女の波乱万丈の人生を支えてきた「私は幸せです」の音楽。その言葉を何度も言い聞かせながら、人生を生きてきたヨンスン。愛する我が子ガンホを、ただただ甘えさせて育てることは叶わなかったが、ヨンスンが言うように、親になること自体が初めてだったのだ。ヨンスンはヨンスンなりに、頑張って精一杯の子育てをした。そして、ヨンスンはそんな自分を「悪い母」と認めて、またガンホの母親に生まれ変わりたいと願う。ガンホは、そんな母ヨンスンの想いをすべて受け止め、優しい息子に育った。
最後に、ガンホとミジュ、そしてふたりの子どもである双子たちにも触れておきたい。ガンホとヨンスンの関係性とともに、ストーリー上の重要な役割を果たしているガンホとミジュのロマンス。高校生の頃から互いを想い合うふたりの関係は、ガンホが復讐に向かう中で一度は離れてしまった。しかし、ガンホの抱えていた秘密を知ったミジュは、秘密にしていたガンホの子どもたちである双子の存在を明かす。この双子が、とにかくすこぶるかわいい。おませな長女のイェジン(キ・ソユ)と、ほんわりしながら気が利く長男ソジン(パク・ダオン)。ガンホが7歳に戻ったときには、遊び仲間として3人で仲良く遊ぶ姿に癒され、ガンホが双子を「(自分の子供だと)気づかずごめん」と抱きしめる姿には泣かされた。ガンホがミジュにプロポーズする姿も笑いと感動の場面であり、今後の親子4人の幸せな様子が目に浮かぶような終幕となった。
本作で魅せたイ・ドヒョンの多彩な顔は、韓国では「千の顔を持つ俳優」と褒め称えられる。冷酷無情な顔、純粋無垢な幼子、恋する高校生に、陰謀に立ち向かう苦渋の表情。優しさと聡明さを併せ持つ検事であり、息子の顔、そして父の顔を持つ。イ・ドヒョンは、間違いなく“千の顔を持つ俳優”として、チェ・ガンホを魅力的に演じきった。本作は、今後入隊を控えるイ・ドヒョンの代表作となるだろう。ラ・ミランの圧巻の演技と、イ・ドヒョンの親子ケミの見事さは、本作のクランクアップで、母を演じたラ・ミランを前にして涙するイ・ドヒョンの姿にも表れている。本作は、ラ・ミラン×イ・ドヒョンの親子ケミと、イ・ドヒョン&アン・ウンジンのラブケミを楽しむことができる、そんな作品だった。
■配信情報
『良くも、悪くも、だって母親』
Netflixにて配信中
出演:ラ・ミラン、イ・ドヒョン、アン・ウンジン
原作・制作:シム・ナヨン、ペ・セヨン
(写真はJTBC公式サイトより)