沖田修一がたどり着いたフィクションだからこそできること 松田龍平との再タッグ作を語る

沖田修一が語るフィクションの可能性

 実家暮らしの40歳のひきこもり男が、家の建て替えで妹家族との「2.5世帯住宅」に住むことに。否応なしに外の世界へと放り出され、少しずつ彼自身も、周囲も変化していくさまを温かに見つめる『連続ドラマW 0.5の男』(全5話)が、WOWOWにて放送・配信スタートした。沖田修一監督と松田龍平が、映画『モヒカン故郷に帰る』以来、7年ぶりとなる再タッグを組んで放つオリジナルドラマである。

 80代の親世代が50代のひきこもりの子の面倒を見続ける「8050問題」が現実問題としてあげられるなか、“0.5の男”こと、40歳のひきこもり立花雅治を演じている松田龍平がさすがの求心力で物語に引き込み、早くも話題を集めている。そんな松田と「もう一度一緒に仕事をしたいと、ずっと思っていた」と語る沖田監督に話を聞いた。

「WOWOWのオリジナル企画に面白そうだなと興味を抱いた」

――とても興味を惹かれるオリジナル作品です。タイトルも印象的ですね。

沖田修一(以下、沖田):タイトルに関しては、共同脚本の牧五百音さんとの本打ちの中で出た案です。今回僕は、「こういう企画があるんですけど」とお話をいただいて、面白そうだなと思ったので、自分も参加して一緒に書いていく形でした。

――監督は、これまで手掛けられた作品のほとんどの脚本を、ご自身で書かれてきています。今回のようにすでに構想のある企画に手を加えて作っていくスタイルはいかがでしたか?

沖田:時と場合によりますが、なかなかテレビのこういった話でオリジナル企画は少ないので、面白そうだなと思いました。主人公の雅治は、自分に割と年齢が近くて感情移入もできました。自分自身、一歩違えばこうなる可能性があるだろうと。お話をいただいた時点では、まだ脚本が完成していなかったので、みんなで集まって話し合いをさせてもらいながら作り上げていくことができました。原作のないドラマとして、すごく気持ちのいい作業ができたと思っています。

 

――その時点で主人公の立花雅治を、松田龍平さんが演じることは決まっていたのでしょうか?

沖田:いや、決まっていませんでした。内容と脚本をまず作って、そこから「誰にしようか」となっていきました。

――そうなんですか! 沖田監督と松田さんの組み合わせが最初に決まっていて、この物語が出来上がっていったのかと思っていました。あまりにもぴったりだと感じたので。

沖田:いや、そんなことは全然なくて(笑)。松田さんとはもう一度ご一緒したいとずっと思っていたので、話し合いのなかで松田さんの名前があがってきて、これはチャンスだと思いました。『モヒカン故郷に帰る』(2016年)でご一緒して、次に松田さんとやるなら、こういう役が絶対に面白いだろうとは、準備の段階から思っていました。松田さんに決まった時点で脚本の完成度は半分くらいだったので、そこから厚みを増した部分はあります。でも脚本よりも、松田さんで厚みを増したのは、実際の撮影現場のほうが強いと思います。

――改めて、松田龍平という俳優の魅力、引力をどこに感じますか?

沖田:松田さんは、松田さんなりの美学とか、思っていることがすごくある方で、止まっているだけですごく見てしまう不思議な佇まいがある方ですよね。僕の映画には、結構笑いの要素が多くて、それを松田さんがやってくれると、僕のコメディの感じがより面白くなる感じがします。こちらがきちんと準備をすればちゃんと応えてくれる人だと思います。

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