沖田修一がたどり着いたフィクションだからこそできること 松田龍平との再タッグ作を語る
「毒にも薬にもなるフィクションだからこそ、それを作る自分にも何かできるはず」
――雅治の周囲のキャラクターもみな魅力的です。
沖田:そうなんですよ。最初に塩谷家の家族4人(臼田あさ美、白鳥玉季、加藤矢紘、篠原篤)の本読みをやったんですけど、それがすごく良くて。特に、蓮役の矢紘くんが自然体でかわいいんですよ。恵麻を演じた玉季ちゃんもすごく矢紘くんをかわいがって、それで矢紘くんも本当の蓮くんのようになっていきました。そうやって自然と塩谷家が完成していった感じがしています。
――恵麻ちゃんもすごく良かったです。
沖田:第1話の最後で、夜、恵麻ちゃんがキッチンに食べ物を取りに行き、そこで雅治と遭遇する場面。普通なら単純にひとりで食べ物を取りに行くだけだと思うんですけど、玉季ちゃんが、恵麻が大事にしている、あるぬいぐるみを持っていきたいと、自分から言ったんです。そういったことも、現場の雰囲気によっては言いづらいと思うんですけど、萎縮せずにお芝居できる場になっていた証だと思いますし、すごく良かったと思っています。
――公式サイトで、2.5世帯の家のセットの様子が公開されています。沖田監督の撮影は1シーン1カットが多く、本作でも活かされています。2.5世帯の家の造りも1カット撮影しやすい構造に見えますが、台本の時点で、家の造りを考えていたのでしょうか。
沖田:2.5世帯の家を2階建てで撮りたいと決まってからは、1カットを狙えるんじゃないかと考えましたし、それを想定して台本を書き直したりはしました。
――台本上のキャラクターの動線(動き)といったことでしょうか?
沖田:そうですね。第2話の最初のシーンは、全員が収まっていくような1カットの動きを、想像しながら狙って書いています。台本を読んでいる俳優さんも、「ここは1カットだろうな」と思いながら読んでいたと思います。
――本作のテーマの根っこには、すでに大人になっている世代の引きこもりという社会的な問題がありますが、作品全体が温かな空気で包まれているのが魅力です。
沖田:今まで普通に生きていた人が急に働けなくなったり、社会の中で生きていけなくなるようなことって、結構あると思うんです。それって僕にも十分可能性があることだと思っています。だからそれを病気のように描くというより、みんなが見覚えのある話として、ドラマにしたいという気持ちがありました。自分がそうなる可能性もあるし、家族がなってしまうこともある。そうした人たちに、なにかが刺さってくれるといいなと思っています。
――監督自身も雅治になっていた可能性があるとのお話も出ましたが、年齢もキャリアも重ねてきて、ご自身の視点が変わって来たと感じる部分はありますか?
沖田:これまではあまり感じなかったんですけど、最近感じるようになってきました。僕はフィクションを通して、自分が面白いと感じることをやってきました、その気持ちはずっと変わらない部分なんですが、フィクションという思考が大きく人の毒にも薬にもなることを感じるようになりました。だからこそ、何かできることもあるんじゃないかと。今回の『0.5の男』もそうですが、こんなちっちゃな自分が面白がって作っているだけだけれど、誰かのために、何かしらできることがあるかもしれないと思っています。
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■放送・配信情報
『連続ドラマW 0.5の男』(全5話)
WOWOWプライムにて、毎週日曜22:00〜放送
WOWOWオンデマンドにて全話配信中
出演:松田龍平、臼田あさ美、白鳥玉季、加藤矢紘、井之脇海、青木柚、篠原篤、木場勝己、西野七瀬、風吹ジュン
監督:沖田修一、玉澤恭平
脚本:牧五百音、沖田修一
音楽:池永正二
主題歌:工藤祐次郎「たのしいひとり」
プロデューサー:植田春菜、石原仁美、東島真一郎
製作:WOWOW、C.A.L
公式サイト:https://www.wowow.co.jp/drama/original/the-0.5/
配信ページ:https://wod.wowow.co.jp/program/179662