小芝風花の“リアル”な言葉は現代人に響く 『波よ聞いてくれ』が提示したメディアの在り方

『波よ聞いてくれ』ミナレの“リアル”な言葉

「誰もが自由に自分の意見を発信できる世の中になるということはね、他人を簡単に批判したり否定したりできるようになるってことだから。(中略)石をぶつけてもいい対象を見つけたら、ぶつけたくなる人もたくさんいるから」

 MRSの制作部チーフディレクター・麻藤(北村一輝)がテレビ局からラジオ局に移るきっかけを作った伝説の芸人・シセル光明(小芝風花)。彼女はインターネットがメディアとしてテレビやラジオと同等の力を持ち、個人の自己表現や情報発信が可能になること、また、そこにはリスクも伴うことを個人ブログの時代から見据えていた。

 そして月日は流れ、『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日系)第6話では、ミナレ(小芝風花/2役)が自分と見た目がそっくりなシセル光明の予測した未来に巻き込まれる。

 麻藤にパーソナリティーとしての才能を見出され、ラジオの世界に足を踏み入れたミナレ。毎回番組の企画で無茶ぶりされ、その度に文句を言っている彼女だが、内心自分のしゃべりを認めてもらえていることが嬉しかったのだろう。それなのに、麻藤が下心で自分をスカウトした可能性が浮上し、ミナレは悶々とした気持ちを募らせていく。

 その矢先、MRSで番組を持つ人気カップルインフルエンサーのヒロ(カルマ)とナツ(花音)が、ラジオでリスナーの容姿を誹謗中傷したことで大炎上。麻藤をはじめ、ラジオ局のスタッフたちはクレーム対応に追われる。ミナレ自身はそんな大して知りもしない人たちの炎上騒ぎなどどうでも良かったが、いつ炎上してもおかしくない番組をやっているということで巻き添えをくらい、麻藤の元妻で編成部長・大祝(黒谷友香)の指示で炎上防止・対策講習を受けることに。その内容は炎上ゼロの人気パーソナリティー・まどか(平野綾)を交えた、「もしリスナーからこんな相談を受けたらどう返す?」という想定問答。相手がリスナーであろうと一切遠慮のないミナレに、まどかはリスナーに寄り添った当たり障りのない模範解答を披露する。

 だけど本当のところ、彼女はミナレを心配してなどいなかった。まどかのストーカーに対する言葉もそうだが、たしかにミナレは啖呵を切って現実を突きつけるけれど、それは相手を思うからこそ。誰かを傷つけようとか、ましてやヒロ&ナツカップルのように敢えて炎上を起こして、話題を集めようとか、そういう魂胆は一切ない。本当に、相手にとって必要だと思っているからだ。一見過激な内容だとしても、そこから浮かび上がってくるバカがつくほど正直なミナレの“リアル”な言葉がリスナーの心を捉えてきたのだろうし、今まで炎上しなかった理由もそこにあるのだろう。相変わらずミナレを容赦無くディスりまくるまどかだが、そこにはちゃんと「バカだけど、少なくとも他人のことをバカにはしていない」彼女へのリスペクトがあるのだ。

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