小芝風花の“リアル”な言葉は現代人に響く 『波よ聞いてくれ』が提示したメディアの在り方

『波よ聞いてくれ』ミナレの“リアル”な言葉

 そんなミナレが、自身の冠番組で例のカップルインフルエンサーに公開生説教! 元々は彼らの番組を担当するディレクターの前下(小多田直樹)に泣きつかれ、ゲストとして招いた2人に番組で謝罪をしてもらう予定だった。しかし、あらかじめ前下が準備した謝罪文を読むだけのヒロとナツにシスター姿のミナレが「口だけの謝罪でどうにかしたいと思うなら、せめて反省してるって騙せるくらいの演技力磨けよ、この大根役者!」とキレる。そう、彼らは何もかも“リアル”じゃないのだ。

 そもそも本当のカップルじゃなくてビジネスだし、炎上も商売のうち。それが逆効果だとわかると、今度は悪いとも思っていないのに体良く反省を示す。そんな彼らの言葉が誰かの心に響くはずもない。同じように、SNSに呟かれた顔も名前もわからない誰かの問題の本質からズレた誹謗中傷も2人には届かなかった。ただ問題なのはその中に混じった真摯な意見やアドバイスを彼らが受け止め、反省に生かせなかったこと。ミナレに直接説教されても2人の被害者意識は変わらず、生放送中に大祝から番組の打ち切りを告げられる。

 自分の思ったことや感じたことを誰もが不特定多数の人に発信できるようになった現代。それほど大きな影響力を持っていなくとも、不意に呟いた言葉が誰かを傷つけ、死ぬまで追い詰めることもある。テレビやラジオの炎上は人ごとではなく、もはや私たち一人ひとりがその可能性を秘めた“メディア”であるという意識が必要なのだろう。第6話は麻藤が一目置く、誰かを笑いものにするのではなく、自分が笑われることで人を楽しませるミナレの本質を見せると同時に現代のメディア論的回となった。

■放送情報
『波よ聞いてくれ』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜0:15放送
出演:小芝風花、片寄涼太、原菜乃華、中村ゆりか、平野綾、西村瑞樹(バイきんぐ)、井頭愛海、中川知香、小市慢太郎、北村一輝ほか
原作:沙村広明『波よ聞いてくれ』(講談社『月刊アフタヌーン』連載)
脚本:古家和尚
演出:住田崇、片山修、植田尚
音楽:林ゆうき、山城ショウゴ
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:高崎壮太(テレビ朝日)、神通勉(MMJ)
制作:テレビ朝日、MMJ
©テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/namiyo/

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