『あなたがしてくれなくても』“被害者”は誰なのか? 奈緒と永山瑛太が無言の対峙
みち(奈緒)と新名(岩田剛典)は、それぞれのパートナーから“愛されている”と感じてたくてセックスを求めていた。しかし、気づけば2人の間に恋心が芽生え、むしろセックスのないプラトニックな関係にお互いの“愛”を感じるようになっていく。
つくづく愛とセックスのつかみどころのない関係性を考えさせられる木曜劇場『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)。第7話は「体の浮気」と「心の浮気」、そのどちらがより罪深いのかを見つめる展開となった。
「一度だけみちを裏切った」という夫・陽一(永山瑛太)の告白を受け、思わず家を飛び出したみち。そのセックスに愛はなかった。一度きりの過ちを犯してしまったけれど、陽一の心はみちにある。そうはわかっていても、みちは「自分とはしなかったのに、他の人とはした」という事実が許せない。
そんなみちに後輩の華(武田玲奈)が投げかけた「先輩1人だけが被害者なんですかね?」の言葉が、今回のキーワード。浮気は現実逃避。陽一が逃げたくなった現実には、必ずみちの存在があったはず。それに向き合わずに「自分は被害者だ」と主張するばかりでは歩み寄ることは不可能だ、と。
もちろん、世の中には一方的に被害を受ける理不尽なケースもある。しかし、多くの場合は双方の視点から物事を見なければ公正に判断できないことも。なかには、その前後の状況を紐解いていくと、加害者と被害者の関係性が揺らぐことも少なくない。害を加えたきっかけを作っていたのは、被害者自身だった。被害者がそんなことをしなければ、そもそもトラブルは起きなかった……なんてことも。
みちと陽一の場合では、陽一があまりにもコミュニケーション下手で、「100%陽一が悪い!」という視聴者の声も聞こえてきそうだが、少なからずみちは「陽ちゃんはそういう人」と彼の性格をわかっていたはず。もしかしたら、もっとうまいやりようがあったのではないかとも思う。
ひょっとしたら付き合ったばかりのころなら、うまく言葉にできない陽一の気持ちを汲み取るような会話の仕方をしていただろうし、新名に心を奪われていなければ陽一が星を見せようとしてくれていたことをもっと早くに気づけていたかもしれない。
しかし、なかなか解決しないレスへの不満から、「自分が被害者だ」という意識が膨らみ、その余裕がなくなっていった。そこに輪をかけての浮気だ。頭に血が上ってしまうのもわからなくはないが、新名への恋心を棚に上げているみちは純粋な被害者とも言えないような気がする。
なんの弁解もできない陽一と対峙した無言の数分間は、観ているこちらも息が詰まるほどの緊迫感だった。きっと陽一からすれば、みちとの話し合いはいつもこんな空気を感じていたのではないだろうか。そういう意味では、華の公正な眼差しとツッコミで、「陽ちゃんが逃げようとしていたのは私だ」と省みることができたのは大きな成長だ。