『どうする家康』甲本雅裕の「きっと大丈夫」を胸に 夏目“吉信”の人生が詰まった名演に涙

『どうする家康』甲本雅裕&波岡一喜の名演

 三方ヶ原の戦いでは、本多忠真(波岡一喜)もまた命を落とす。本多忠勝(山田裕貴)と榊原康政(杉野遥亮)の窮地に現れた忠真は、たった1人で敵を迎えうたんとする。「叔父上を置いてはいけぬ!」と口にする忠勝に、忠真は「おめえの死に場所はここではねえだろうが!」「おめえの夢は主君を守って死ぬことじゃろうが!」と一喝した。忠勝に武芸を徹底的にたたき込み、最強の武士として育ててきた忠真は、家康を守りたいと奔走する忠勝の真の思いを理解している。叔父を死なせたくないゆえに「あいつを……主君などと……!」と言う忠勝を忠真は殴り倒し、「好きなんじゃろうが!」と声をあげた。

「殿を守れ。おめえの大好きな殿を」

 忠真は忠勝と熱い抱擁を交わすと、忠勝を先に行かせる。可愛がっていた甥との別れはさすがにこたえるものがあったようだ。涙をこらえ、勇ましい面持ちだった忠真が、ふっと寂しげな顔になり、思わず振り返る姿が切なかった。忠真は忠勝との今生の別れを断ち切るように酒をあおると、「こっから先は一歩も通さんわ!」と猛々しく叫び、武田兵たちに立ち向かった。

 竹千代と吉信の回想シーンで、吉信がこんなことを言っていた。

「弱いと言えるところが若のよいところでござる。素直にお心を打ち明け、人の話をよくお聞きになる。だから、皆、若をお助けしたくなる」

 家康は頼りない殿かもしれない。けれど、己の弱さを誰よりも理解している。三方ヶ原の戦いで家康を負かした信玄でさえも「大将はひ弱で臆病。されど……己の弱さを知る、賢い若造じゃ」と評していた。その身を挺してでも家康を守る。そう覚悟を決めた家臣たちによって、家康は生かされた。

 広次と忠真、そして数多くの家臣たちの死を受け、家康はずっと泣いていた。

「わしは……皆に生かされた……。決して無駄にはせぬ……!」

 必ず立て直すと決め、家康は前を向く。「きっと大丈夫」という広次の言葉は、この先も家康を励ますことだろう。

■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK

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