『日曜の夜ぐらいは...』宝くじに当選したサチ、若葉、翔子に“辛酸”が 3人の幸せを願って

『日曜の夜ぐらいは...』3人に“辛酸”が

 宝くじ一等当選というほぼほぼ0%に近いとんでもない可能性を手繰り寄せたサチ(清野菜名)。しかし「楽しいことあると、きついから。きついの耐えられなくなるから。きついだけの方が楽なんだよ」と言って、せっかくバスツアーで意気投合した若葉(生見愛瑠)、翔子(岸井ゆきの)との連絡先の交換を拒否したサチのことだ。宝くじで一等の3000万円を当てても、すぐには喜べない。口を突いて出てくる言葉は「怖い、嫌だ。不幸になる気がする」だ。

 “幸せ”を前にした時に真っ先に沸き起こる感情が「怖い」で「こんなことが自分の身に起きるはずがない」と疑ってしまうのは、若葉と翔子も同じだ。それぞれが日々“こんなはずじゃなかった”という小さな絶望と諦めを抱きながら、時に八方塞がりな感覚に襲われ、報われる瞬間などなかなかなく、自分の居場所もわからぬままに人生を歩んでいる3人の正直な所感なのだろう。

 『日曜の夜ぐらいは...』(ABCテレビ・テレビ朝日系)第3話では、3000万円を山分けした3人に待ち受ける辛酸が描かれた。

 「警戒しちゃうんだ、いい話とか楽しいこととか」「期待とかするからガッカリするし、自分の人生にそんな良いこと起きるはずないって思っちゃうんだ」というサチは、「当たったら3人で山分けね」という約束を思い出し安堵する。「3人一緒なら自分も幸せになれる気がした」という彼女の言葉を聞くにつけ、本当に彼女ら3人が出会えた奇跡を思う。自分1人では“神様からのご褒美”なんて信じられないけれど、あの2人と一緒だったから手にできたと、これが現実だと思える。山分けを思い留まらせようとするサチの母・邦子(和久井映見)の気持ちもよくわかるが、3人一緒でなら「幸せ」や「楽しい」を享受できるようになっているサチの変化は希望だろう。

「絶対に絶対に幸せになろうね。不幸になっちゃダメだよ、絶対だよ」

 自分1人では信じられないし実態もわからない“幸せ”も、2人には笑っていてほしいし、それが続くことが“幸せ”なのだろうと思える。2人と一緒なら自分も“幸せになっていい”と思える。

 1000万円を手にした後の彼女らの使い方も実に堅実だ。パッと使ってしまうこともなく、若葉は旅行土産を祖母・富士子(宮本信子)に買い、サチは迷わず母親に最新型の車椅子を購入する。しかし、それぞれに不幸の元凶が訪れるのだ。これまでも若葉が必死で貯めたバイト代について祖母にその使い道を話すとどこからともなく現れ、かっさらっていく母親(矢田亜希子)が例の如くやって来た。自分の人生を散々搾取してきた名ばかりの母親を拒絶する気力が若葉には残っていないのだろう。1000万円の記帳がされた通帳を差し出してしまう。“今度こそ”という思いをこれまで散々踏みにじられ、その“今度”が来ないことをどこかで諦めとともに悟ってしまっている者は、いざそういう場面になった際に驚くほど無抵抗だ。どこかで“やっぱり自分の人生はこんなもんだ”と身に染みてしまった相場感を拭い去れないのだろう。

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