チャン・ヒョク×チャン・ナラが9年ぶり共演 『シークレット・ファミリー』の意外な展開

『シークレット・ファミリー』の意外な展開

 5月5日よりディズニープラス「スター」にて配信中の『シークレット・ファミリー』。本作は、人気最強コンビのチャン・ヒョク×チャン・ナラが9年ぶりに共演したスパイコメディだ。

 物語は、チャン・ヒョク演じる国家情報院のブラック要員クォン・ドフンと、チャン・ナラ演じるカフェを経営する主婦カン・ユラを中心とした家族を描いたホームドラマのような展開から始まる。ドフンは、ユラと仲睦まじい夫婦であり、娘ミンソ(シン・スア)と3人家族で幸せに暮らしていた。しかし、ドフンには、家族に見せない秘密の顔があった。表向きは貿易商社の課長と偽っているが、実際は、国家情報院のブラック要員として働いているのだ。

 ドフンは、愛妻と愛娘のために、家では終始デレデレのパパだが、銃を握ると凄腕のスナイパーとなり、仕事も完璧だった。そんなドフンを、国家情報院の上司である、オ部長こと、オ・チョンリョン(チェ・ジョンアン)がたびたび呼び出すことをユラや、弟のジフン(キム・カンミン)、父ウンス(イ・スンジェ)、義妹イ・ミリム(ユン・サンジョン)ら家族は、よく思っていない。ドフンは、休日出勤もたびたびで、家の用事もドタキャン続きの日々。国家情報院の急な命令は、妻との結婚記念日の旅行も、亡き母の法事であろうと、容赦はしてくれないのだ。

 本作は、全12話の物語なのだが、第1話~第4話ラストまで、ドフン一家の「日常」を描いたホームドラマの様相で、“どこにでもあるような普通の家庭の日常”が描かれている。それは、子供の学芸会であったり、2人目の子供を作る話であったり、亡くなった母親の遺言を巡って兄弟が諍いを起こしたり、仕事を理由に家族の予定をドタキャンしたりと、ごく普通の家庭の日常が延々と繰り返されているのだ。

 “退屈で面白くないものが延々と続くこと”、ともすれば冗長にも取れる描写が続くことの意味がわかるのは、第4話ラストで物語が急展開を見せた後からだ。「退屈で面白くないもの」というのは、すなわち安全な状態にある、“平和で平凡なありふれた日常”のことだ。失くして気づく“幸せ”の形の一つだろう。子供の学芸会に行けることも、2人目の子供を作る話も、法事をできることも、その全てが、“幸せ”という宝石箱の中に詰まっている宝石の一つではないだろうか。求めても誰もが得られるとは限らないもの。それは売上の上がらないカフェで終始ゆったりと過ごしていたかのような、妻ユラの切実な求めの結果である「穏やかな日常」だ。

 ドフンの仕事は、終始緊張し、緊迫しているのだが、「非日常」にあるドフンが、家に帰り着くと「日常」がある。険しい顔で仕事をこなした後に、駆け寄る娘を抱き上げるまなじりの下がった眼は、ドフンがなによりも家族を大切にしていることがわかるシーンだ。物語は、ドフンを中心にした前半から、妻ユラの過去へと焦点が移っていく。それとともに、これまでのホームドラマの様相はなりを潜め、一転、緊迫感溢れるサスペンスアクションへと姿を変えていく。

 ユラが、切実に望み大切にしてきたものが、暗い過去とともに浮上してきたときに、夫婦が対峙するところで、2人はどんな言葉を語るのだろう。ドフンとユラがともに大切にしている「家族」。古今東西スパイものは人気ジャンルで、たくさんの作品がある。だが、本作が『007』シリーズのようなスタイリッシュで秘密めいたスパイものと違う点は、「家族」を描いている点だ。韓国映画『キル・ボクスン』でも描かれていた、“殺し屋の日常”である「家族」の姿。ドフンとユラが、ミソンら家族とこれまでのように、平和でなんてことのない日常を送るために、これから夫婦はどんな選択をするのだろう。

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