『あなたがしてくれなくても』が共感を呼ぶ理由 岩田剛典と田中みな実の“溝”が深まる

『あなたがしてくれなくても』共感の理由

 何度も何度も愛されたいと願い、夫婦として向き合う時間がほしいと訴えてきたはずだった。しかし、それを「ただセックスをしたがっているだけ」と軽んじられてきた。みちと新名が求めてきたものに、まだ陽一も楓もちゃんと気づけていないかもしれない。

 それでも「追い詰めてしまったからやれることをやる」と言い放つ楓と、「きっとみちを傷つけてきた」とこれまでの言動を省みた陽一では、やはりみち&陽一夫婦のほうが修復するチャンスがありそうだ。

 みちの手を取り、「ちゃんと考えてるから」と思っていることを言葉にした陽一。その手は温かく、その言葉はみちの心にまっすぐに届いた。たとえセックスがなかったとしても、こうしたコミュニケーションができていれば。みちの心はずっと陽一に向いていたのではないだろうか。

 「陽ちゃんとの今が苦しいのは、きっと私と陽ちゃんには過去も未来もあるから」と、改めて陽一との将来に目を向けることができたみち。陽一と過ごしてきたこれまでの月日。一緒に生活してきた空間がある。家族としてつながってきた人もいる。それらをすべて精算しても、新名との未来を手にしたいとまではまだ思えていない。今ならまだ間に合う。

 「砂時計みたいにキラキラして見えるのは一瞬だ。その一瞬に私たちは逃げてるだけだ。きっと私と新名さんは今しか見えていない」と現実的に考えさせられるだけの力が、陽一の言動にはあった。新名と心を通わせることを断り、そっと砂時計をクローゼットの奥にしまい込んだみち。

 いつか「この箱なんだったっけ?」と開けて、「ああ、そんなこともあったな」なんてフッとひとり微笑む、そんな密かな恋の思い出になれば……。そう思ったのだが、どうやら予告映像を観るとまだまだ穏やかな日々に戻ることは難しそうだ。新名は、ようやく見つけた心の拠り所であるみちを諦めることができない。そして、陽一は結衣花(さとうほなみ)との衝動的な浮気をみちに白状してしまうシーンも映し出された。

 傷つきたくないし、できれば人のことも傷つけたくない。そう思っていても、自分を守ろうとして誰かを傷つけてしまうことがある。それは、人間として避けようのないことなのかもしれない。であれば、お互いに傷つけしまったあとに何ができるのだろうか。どうしたら傷つけ合った相手との未来をまた歩んでいけるのか。そんなことを、登場人物たちのもがく姿を見ながら考えていきたい。

■放送情報
木曜劇場『あなたがしてくれなくても』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:奈緒、岩田剛典、田中みな実、永山瑛太、さとうほなみ、武田玲奈、宇野祥平、MEGUMI、大塚寧々ほか
原作:ハルノ晴『あなたがしてくれなくても』(双葉社)
脚本:市川貴幸、おかざきさとこ、黒田狭
演出:西谷弘
プロデュース:三竿玲子
主題歌:稲葉浩志「Stray Hearts」(VERMILLION RECORDS)
挿入歌:稲葉浩志「ダンスはうまく踊れない」(VERMILLION RECORDS)
音楽:菅野祐悟
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/anataga_drama/
公式Twitter:@anataga_drama
公式Instagram:@anataga_drama
公式TikTok:@anataga_drama

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