『らんまん』女性差別を打ち破った佐久間由衣の叫び 万太郎と峰屋が新たな門出を迎える
5月4日放送の『らんまん』(NHK総合)第24話では、万太郎(神木隆之介)と峰屋の門出が描かれた。
東京に行かせてほしいと申し出た万太郎の真意は、植物の研究にあった。障子越しに万太郎の話を聞いたタキ(松坂慶子)が口にしたのは、現実的な心配だった。タキは落ち着いた口調で、植物学は仕事になるのか、一生を棒に振ってもかまわないのかと問いただした。
「呼ばれちゅうがよ。この日本にどればあの種類の植物があるか。まだ名前も付けられちゃあせん草花の本当の素性明かして、名付け親になりたいがよ」
ためらいがちに言葉を選びながらだったが、万太郎の目には強い光が宿っていて、それを見たタキは観念したように座り込んだ。
「高知におったら守っちゃれる。わしの目が黒いうちは不自由させん。けんど行くがか? 峰屋を捨てて」
短く「はい」とうなずき、万太郎は「槙野万太郎は、おばあちゃんの孫と生まれてほんまに幸せでした」と頭を垂れた。
タキはこうなることをわかっていたはずだ。第22話で牢にいる仲間に後ろ髪を引かれる万太郎に、タキは「代わりに何をするかじゃろう」「何かを選ぶことは何かを捨てることじゃ」と言った。その直後、キツネノカミソリを見つけてはしゃぐ孫を見る表情は、どこか諦めも混じっているように思えた。
近い将来、万太郎が植物の道へ進むことは覚悟していた。それでも涙があふれたのは、これまで過ごしてきた日々があったからだ。万太郎を峰屋の跡取りにする夢は不本意な結果に終わったが、万太郎を育ててきたタキには、命に代えても惜しくない存在が自らの元を去る寂しさがあったのではないか。目に涙を浮かべて繰り返す「わしは許さんぞね」は愛情の深さを物語っていた。
別れの季節は峰屋にも訪れる。酒造りのため集まった一同に、万太郎は植物学の道に進むと告げる。酒蔵は綾(佐久間由衣)に任せることになるが、さっそく分家の人間から異論が噴出する。「こんな若い女が蔵元になって腐造を出したらどうするがじゃ。女はけがれちゅうきのう」と、文字にするのもはばかられる文句で痛烈に綾を責め立てた。