『良くも、悪くも、だって母親』イ・ドヒョンに胸キュン 高校生から検事まで多彩な演技

『良くも、悪くも~』イ・ドヒョンに胸キュン

 ヨンスンは、なによりもガンホが成功することだけを考え、ガンホが満腹に食事をすることさえ許さない。ガンホの人権や感情は無視に等しい育て方をしていくのだ。そんな厳格すぎる子育てにより、ガンホはエリート検事となる。しかし、ガンホの心はそれまでの確執により、ヨンスンから離れてしまっていた。ガンホは、結婚を機に、世話になった会長のソン・ウビョク(チェ・ムソン)の養子となることを決め、ヨンスンに養子の同意書にサインをするよう迫るのだ。結婚の報告に来たと喜ぶ母ヨンスンと、母親から離れる最後通牒を突きつけるガンホの互いの言葉にならない思い。ハンコを押すヨンスンと、それを見るガンホの眼差しに胸が痛くなる、親子の辛い場面だ。

 “無償の愛”とは、親から子への愛情のことをいうことが多いが、子が親を想う愛情のひたむきさ、無条件さ、純度の高さは親の比じゃないのかもしれない。ガンホが、母ヨンスンの作った料理を投げ棄てた時、ガンホの心の中で大切なものを失くしてしまったのだろう。いや、ガンホはもっと早くに人間としての真心さえも棄ててしまったのだ。ヨンスンがガンホに与えた教育の結果、ガンホから真心を奪うという果実が実ってしまったのではないだろうか。

 第1話の冒頭で、「豚が空を見られる唯一の方法、それは転ぶこと」とヨンスンが語っている。「転んでこそ、今まで知らなかった新しい世界が見られる」と。勉強ばかりさせられ下ばかりを向いていたガンホが、この冒頭の子豚のシーンとリンクし“転がる”。比喩どおりにここから、ヨンスンもガンホも新しい世界を見られるのだろう。ヨンスンは母として、同じことを繰り返さず育てなおせるのか。ガンホは新たな世界で、なにを見るのか。事故に合う前のガンホの行動は、全てを知ったうえでの復讐への布石だったのか。

 第1話、第2話は、イ・ドヒョンが高校生役から検事役を演じ、抜群にカッコいい姿を魅せた。イ・ドヒョンが前髪をおろし、恋するかわいい高校生の姿に胸キュンし、前髪を上げたクールな検事にときめき、感情を押し殺したような冷たい光を湛えた瞳に胸が疼く。ここから7歳になったイ・ドヒョンの演技が見どころだろう。彼の卓越した演技力により、多彩な魅力を堪能できるのは間違いない。さらに、物語のスピーディーな展開と、力強くドラマを盛り上げるサイドストーリーや、7歳になったガンホと周囲の人々やミジェとの関係性など、親子間の愛だけでなく、里の人々“それぞれの愛”もどう進むのか楽しみだ。里長の妻のマスクにも隠された理由があるのだろう。“里長妻マスク”が剥がされるのはいつか、復讐は果たされるのか、そして親子の関係はどうなるのか、と気になる要素の多い、先の展開が楽しみなドラマがまたひとつ始まった。

■配信情報
『良くも、悪くも、だって母親』
Netflixにて配信中
出演:ラ・ミラン、イ・ドヒョン、アン・ウンジン
原作・制作:シム・ナヨン、ペ・セヨン
(写真はJTBC公式サイトより)

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