『らんまん』繋がれていく自由の炎 万太郎の絶望と希望が詰まった第5週の幕開け

『らんまん』繋がれていく自由の炎

 前回、万次郎が己の後悔を「人の一生は短い。後悔はせんように」という教訓に変え、万太郎に授けたのも興味深かった。自分が経験した苦労や後悔を年少者に押し付ける年長者だけではなく、万次郎のようにそれらをできるだけ取り除いてやろうとする年長者もいる。タキ(松坂慶子)の場合はどちらだろう。人生をかけて峰屋の看板を守り続けてきた己の役目を万太郎に、そんな万太郎を支えるという役目を綾に託そうとしているタキ。それが最善の道と信じていながらも、家を出て行った2人を探し出し、無理やり連れ戻さないところに彼女なりの愛が感じられる。いずれにせよ、万太郎と綾の決意は固い。2人は指切りをして「今日、選んだ道を悔やまない」と誓い、それを竹雄が証人として見届ける。3人の新たな人生がここから始まったような気がした。

 一方で、彼らの自由を脅威とみなし、抑え込むものもいる。逸馬との約束通り、佐川に帰る前に声明社の集会に参加した万太郎。そこで演説台に立った万太郎は警官に結社の一員とみなされ、集会条例違反で収監されてしまう。集会条例とは、自由民権運動を取り締まるため、明治13年に公布されたもの。国民の政治参加を訴える自由民権運動は自分たちの思い通りに政治を動かしたい一部の人たちにとって目障りだったのだ。のちに戦時下でも同じような法が作られる。いつの時代も、現代を生きる私たちにとっても、一連の出来事は決して他人事ではない。

 万太郎と逸馬が演説台で語ったように、男も女も、若者も高齢者も、私たちはみな違う強さを持っている。その強さをそれぞれが思う存分発揮できれば、国全体、いや世界全体が良い方向に大きく変わっていけるだろう。

「踏んづけられたら、その時こそが変化の機会」

 第21話はラストに厳しい展開が訪れながらも、全体として希望を感じられる回となった。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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