『らんまん』繋がれていく自由の炎 万太郎の絶望と希望が詰まった第5週の幕開け

『らんまん』繋がれていく自由の炎

「本当は鎖を引きちぎって野山に行きたい」

 ジョン万次郎(宇崎竜童)との出会いで一度は抑え込んだ万太郎(神木隆之介)の情熱に再び火が点いた『らんまん』(NHK総合)第4週。かつて世界中の仲間と捕鯨船に乗り込み、クジラを追った万次郎は、その自由を手放した後悔や痛みを胸に抱えたまま生きていた。

 そんな自分とよく似た名前の万次郎を、万太郎は「もう一人の自分」と語る。もう少し噛み砕いて言えば、逸馬(宮野真守)や万次郎と出会わず、己の気持ちに蓋をし、峰屋の当主として生きた未来にいる自分と言えるだろう。

 だが、幸運なことに万太郎は2人と出会った。そして、坂本龍馬(ディーン・フジオカ)が言う“自分の務め”と、池田蘭光(寺脇康文)が言う“金色の道”を万太郎は見つける。それは緑豊かな地に暮らし、植物の絵が描けて、英語で読み書きができる自分が、日本の植物を世界に知らせること。そのために、佐川を出て、最先端の研究が行われる東京に出ることだ。第5週初日の放送では、万太郎がその決意を綾(佐久間由衣)と竹雄(志尊淳)に語る。

 誰かが得をしたら誰かが損をする、という価値観が根強い日本では慎ましい生き方こそが美徳とされがちだ。その考えに基づけば、万太郎が自由を謳歌すれば、誰かが犠牲になるかもしれないので、万太郎は我慢すべきという結論になる。しかし、どうだろう。万太郎の強い意志を受け止めた綾と竹雄は驚きも呆れもせず、見たこともない晴れやかな顔をしていた。

 誰かに与えられた役割を甘んじて受け入れようとしたが、万太郎に触発され、どんなに険しい道であろうと自分の進みたい道へ向かうことを決意する2人。まるで聖火リレーのように万次郎や逸馬から万太郎へ、万太郎から綾や竹雄へと自由の炎が灯されていく。そこには、自由を誰かの犠牲を生むものではなく、また誰かの自由を生むものとして描こうとする本作の姿勢が見てとれる。

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