『合理的にあり得ない』天海祐希が三枚目を演じる理由 過去作と対照的なキャラクターに

『合理的にあり得ない』天海祐希なぜ三枚目?

 「私だ」と電話口で切り出された場合、用向きはだいたいバッドである。それが因縁の相手ならなおさらだ。『合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~』(カンテレ・フジテレビ系)第2話の依頼主は元顧問先社長の諫間(仲村トオル)。涼子(天海祐希)によると「殺したい奴のナンバー1」の諫間は、弁護士資格をはく奪された時「まっさきに手のひらを返して見捨てた男」だった。

 もっとも本題に入りにくいのは愛の告白で、その反対は不幸の手紙である。冒頭の理由①名前を名乗らないのは名乗れない理由があるから。特殊詐欺やセールスなど。②いきなり本題に入るのは、依頼主が切迫した状況にあることを意味する。③そもそも仲の良い相手は不意打ちで連絡してこない。というわけで、予想通り諫間の依頼は一筋縄では行かない案件だった。

 家出娘を探してくれ→どうやら悪い仲間と一緒らしい→違法カジノに潜入→救出失敗→身代金と身柄を交換→1億倍増チャンス、がおおよその流れで、数字当てゲームの代役に指名された貴山(松下洸平)は、見事正解を当てたものの犯人リアム(猪塚健太)は逃走。この時点で娘の久実(白石聖)は奪還できた。さらにリアムに仕掛けたトラップが発動し、現金入りのスーツケースも確保。無事に一見落着となった。

 トリック一つ取ってもご都合主義歓迎の本作を、リアリティがないと言って非難するのはお門違いである。第2話で見るべきはスーツケースの中身がさつまいも、上手すぎる松下洸平のネコのものまね、二度にわたる天海祐希と早見あかりのタイマンだった。なかでも天海は第1話に続いて、食堂のおばちゃん、バブル風OL、ギャンブルに興じる有閑マダムに姿を変えて視聴者を楽しませた。

 本作の主人公である涼子は元弁護士だが、弁護士といえば、天海の代表作の一つに『離婚弁護士』(フジテレビ系)シリーズがある。「ハンサムウーマン」の副題からわかるように、同作で天海が演じた間宮貴子は悩める女性を代弁するクールなキャラクターだった。同じ(元)弁護士でも上水流涼子は趣がだいぶ異なる。パンダ目でソファから起き上がり、ネタ感あふれるコスプレや喧嘩上等の熱血ファイトなど、意図的にファニーな雰囲気をまとっている。本作の天海は三枚目なのだ。

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